今日、夫は本当に愛人を家に連れて帰ってきた。
本当は大阪に出張のはずだった。
朝からバタバタと準備して、会社にも「今日はそのまま大阪に入ります」と伝えてあった。
ところが、出発の直前になってクライアントから連絡が来た。
「申し訳ありません、急用が入ってしまって。今日の打ち合わせ、延期でも大丈夫でしょうか」
拍子抜けするほどあっさり、出張はなくなった。
新幹線の予約もキャンセル。
スーツケースを持ったまま、私はしばらく駅前で立ち尽くしていた。
せっかくだから会社に戻るのも面倒だ。
今日はそのまま家でリモート作業にしよう。
そう思って、私は杉並のマンションへ戻ることにした。
11時12分。
玄関の鍵を開けた瞬間、違和感を覚えた。
家の中が、妙に騒がしい。
テレビの音じゃない。
人の声だった。
しかも、女の声。
私は一瞬、耳を疑った。
でも次の瞬間、はっきり聞こえた。
笑い声だった。
胸の奥がざわっとした。
靴も脱がずに廊下を進み、リビングのドアを押した。
そこにいたのは、知らない女だった。
女は私のソファに座り、テーブルのワインを飲んでいた。
しかも手に持っていたのは、私のグラスだった。
そしてキッチンの方から、夫が顔を出した。
一瞬、三人とも動かなかった。
最初に口を開いたのは、その女だった。
女は私を見て、少し笑った。
「奥さん?」
まるでドラマのセリフみたいだった。
そして、信じられない言葉を続けた。
「今日は泊まるから。」
頭の中が真っ白になった。
でも怒鳴るより先に、言葉が出た。
「今すぐ出てください」
私がそう言うと、二人は顔を見合わせた。
そして、笑った。
夫はため息をつくように言った。
「なんで帰ってきたんだよ」
女はグラスを揺らしながら、ゆっくり言った。
「そんな態度だから嫌われるんじゃない?」
私は一歩、前に出た。
「ここは私の家です。出てください」
すると夫の表情が変わった。
苛立ったように腕を組み、吐き捨てるように言った。
「ここは俺の家だ」
その言葉を聞いた瞬間、何かが冷めた。
私はスマホを取り出した。
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