清掃業者を家に入れたあと、部屋を勝手に開けられて、数日後には現金まで減り始めた。
先月、マンションで排水管の清掃があった。
作業員は三人。
こういう点検は毎年あるし、その時は特に気にしていなかった。
玄関に入ると、三人はそれぞれ別の場所に分かれて作業を始めた。
私は自分の部屋にいた。
その途中、突然ドアが開いた。
ノックはなかった。
一瞬、間違えたのかと思った。
私は思わず聞いた。
「すみません、何か用ですか?」
するとその人は少し驚いたような顔で——
「いえ、確認で……」
と言ってすぐに閉めた。
でも、少ししてまた同じようにドアが開いた。
やっぱり何も言わずに。
私はもう一度言った。
「ここ、作業場所じゃないですよね?」
すると少し間を置いて——
「すぐ終わりますので」
それだけ言って閉めた。
その時、はっきりと違和感が残った。
ただ、家に人もいたし、深く考えなかった。
それから数日後。
家の現金が、少しずつ減っていることに気づいた。
最初は気のせいだと思った。
でも、金額を控えて確認したら——
やっぱり減っていた。
その瞬間、頭に浮かんだのはあの時のことだった。
あの三人、本当に清掃だけだったのか。
……は?
とりあえず、あの日のことは全部記録に残っている。
私はすぐに、防犯カメラの映像を確認した。
三人が入ってきて、それぞれ作業を始める。
そこまでは普通だった。
問題はその後だった。
一人が、ゆっくりと廊下の奥へ向かっていく。
そこは清掃の対象外。
彼は一度立ち止まり、周りを確認した。
そして、そのまま私の部屋のドアを開けた。
迷いはなかった。
さらに映像を進めると、玄関の収納も開けていた。
一つずつ確認するように。
途中で振り返る仕草もあった。
まるで見られていないか確認しているように。
私はその場で動画をすべて保存した。
そしてすぐに管理会社へ連絡した。
最初はいつものような対応だった。
「状況を確認させてください」
私は短く答えた。
「作業と関係ない場所、全部開けてますよね」
少し沈黙があった。
「……確認いたします」
私はそのまま続けた。
「映像、全部あります」
その一言で、空気が変わった。
「すぐに業者に連絡いたします」
その日のうちに、清掃会社の責任者から連絡が来た。
最初は落ち着いた声だった。
「今回の件ですが、確認中でして……」
私は途中で遮った。
「確認じゃなくて、見てください。映ってます」
少し間があった。
「……確認させていただきます」
翌日、再度連絡が来た。
声のトーンは明らかに変わっていた。
「該当の作業員ですが、事実関係を認めました」
私は一言だけ返した。
「そうですか」
向こうは続けた。
「社内規定違反のため、即日で外しております」
そして——
「今回の件につきましては、補償も含めて対応させていただきます」
私はそれ以上は何も言わなかった。
もう十分だった。
ただ一つだけ、はっきりしたことがある。
あの違和感は、間違っていなかった。
そして——
気づいた時点で止めてよかった。
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