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夫の浮気は、一房のみかんから始まっていた。
2026/05/20

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銀座のデパ地下で、そのみかんを見つけた瞬間だった。

「……一箱、一万二千円?」

思わず声が漏れた。

店員が笑顔で言う。

「愛媛の限定品なんですよ。贈答用で人気でして。」

私はその場で固まった。

昨夜、夫はそのみかんを当たり前みたいに食卓へ置いた。

「会社でもらった。」

そう言って。

でも夫は甘い物を食べない。
健康診断で脂肪肝を指摘されてから、ジュースすら避けてる。

そんな人に、
若い女性社員が一万円超えのみかんを贈る?

私は嫌な汗をかいた。

家に帰ると、夫はソファでスマホを見ながら笑っていた。

「今日早かったんだね。」

「うん。」

私は靴を脱ぎながら聞いた。

「ねえ、あのみかん。」

夫の指が一瞬止まった。

「……何?」

「どんな子がくれたの?」

「会社の子だよ。ただの差し入れ。」

“ただの”。

その言い方が妙に引っかかった。

「優しいね。」

そう言うと、夫は視線を逸らした。

その夜からだった。

私は夫の“違和感”を探すようになった。

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帰宅後すぐシャワー。

スマホを裏返す。

トイレにも持っていく。

以前なら、
子供と遊びながらリビングに放置していたのに。

ある日、
酔って帰ってきた夫のジャケットを片付けていると、小さなケースが落ちた。

外国製の高級ウコンタブレット。

私は翌日、
会社の人に何気なく聞いた。

「昨日、かなり飲まれたんですね。」

すると相手は不思議そうに笑った。

「え? ご主人、そんなに飲んでないですよ。」

「そうなんですか?」

「むしろ若い女性社員の子が、“部長飲みすぎです〜”とか言いながら、ずっと隣で飲んでました。」

私は胸の奥が冷えた。

その日の夜。

「最近、ずいぶん気が利く子がいるんだね。」

夫は箸を止めた。

「……何の話?」

「お酒代わりに飲んでくれる子。」

夫は露骨に不機嫌になった。

「ただの会社付き合いだよ。」

「設計の子が接待まで来るんだ。」

「お前、疑ってんの?」

その言い方で分かった。

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ああ、
図星なんだ。

私は静かに味噌汁を置いた。

「仕事より、上司に好かれることを優先する女っているよね。」

夫が黙る。

「会社壊すタイプ。」

長い沈黙のあと、
夫は低く言った。

「……お前さ、怖いんだよ。」

私はその言葉に少しだけ傷ついた。

でもまだ、

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