「今日は海老、絶対すすめてね」
その一言で、
私は嫌な予感がした。
私は居酒屋のホールスタッフだった。
大学の学費と家賃を払うために、
夏休みだけ入ったアルバイト。
社員同士の空気には、
できるだけ関わらないようにしていた。
でもその日だけは、
店の空気が明らかに変だった。
朝の仕込み中から、
厨房が妙にピリついている。
しかも、
納品された海老を見た瞬間、
私は思わず固まった。
「……小さくない?」
いつもより明らかに小さい。
色も微妙に悪い。
それを見た料理長が、
業者へ低い声で言った。
「これ、今週は二回くらい混ぜとけ」
業者は笑いながら答える。
「帳簿はいつも通りで」
「差額は現金でお願いします」
私はその瞬間、
完全に聞いてしまった。
え。
今、
普通にヤバい話してた?
でも周りの社員は、
誰も反応しない。
隣にいた先輩バイトが、
小声で言った。
「聞かなかったことにしな」
その言い方が、
逆に怖かった。
営業が始まると、
二階担当のマネージャーが
スタッフを集めた。
「今日は海老料理、
積極的にすすめて」
海老天。
油爆海老。
海鮮盛り。
とにかく海老を売れと言う。
私は思わず聞いた。
「今日の海老、
ちょっと状態悪くないですか?」
その瞬間、
空気が止まった。
マネージャーは笑いながら言った。
「気のせい気のせい」
でも目だけ笑ってなかった。
そして最初の客席で、
すぐ問題が起きた。
「すみません、この海老、
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