東京行きの新幹線で、ようやく一息ついた瞬間だった。
私は窓側の指定席に座り、コンビニで買ったコーヒーを開けていた。
すると突然、70代くらいの高齢夫婦がこちらへ近づいてきた。
「ここ空いてますか?」
おじいさんがそう聞いてきた――次の瞬間。
返事を待たずに、二人とも勝手に座った。
いや、え?
私は思わず切符を見直した。
間違いない。
そこは私が事前に予約した指定席だった。
「あの…そこ私の席なんですが」
できるだけ丁寧に言った。
すると、おばあさんが露骨に嫌そうな顔をした。
「高崎から大宮までだけだから」
おじいさんも続ける。
「若いんだから立てるでしょ?」
は?
いや意味が分からない。
私はちゃんと金払って指定席取ってるんだけど。
しかも二人とも、当然のように駅弁まで広げ始めていた。
完全に座る気満々。
周囲の空気も微妙だった。
「まあ短い区間だし…」
みたいな空気が少し流れる。
でも私は納得できなかった。
こういう“押し切った者勝ち”みたいなの、本当に嫌いだった。
私はすぐに座席横の車掌呼び出しボタンを押した。
数分後、車掌さんが来た。
「どうされましたか?」
私が事情を説明すると、車掌さんは夫婦に指定券を確認した。
しかし、おじいさんはふてくされた顔で言った。
「後で払うからいいだろ」
車掌さんは冷静に説明する。
「指定席は事前購入、または車内での料金精算が必要です」
すると今度はおばあさんがキレた。
「だから払うって言ってるじゃない!!」
でも――払わない。
財布すら出さない。
車掌さんが何度促しても、
「後で」
「次来た時でいい」
「今忙しい」
と意味不明な言い訳。
結局その場では、
「次回見回り時に確認します」
と言って車掌さんは離れた。
……が。
数十分後、自由席側で空席が出た瞬間。
夫婦、何食わぬ顔で別の指定席に移動。
しかもまた勝手に座っていた。
私は思わず二度見した。
え、常習犯じゃん。
しかも今度は、
別の乗客とも揉め始めている。
「そこ私の席なんですけど…」
と言われても、
「少しくらいいいでしょ!」
「最近の若者は冷たい!」
の一点張り。
車内の空気が完全に悪化していった。
そして次の見回り。
今度は車掌さんだけじゃなかった。
制服姿の乗務警察も一緒だった。
「お客様、指定券をご提示ください」
するとおじいさん、急に大声を出した。
「年寄りいじめか!?」
おばあさんまで騒ぎ始める。
「警察まで呼ぶなんて最低!!」
さらに突然、おばあさんが座席に寝転び始めた。
「動けませぇん!!」
車内騒然。
周囲の乗客、ドン引き。
そして次の瞬間。
おばあさんが怒りながら保温瓶を窓に投げつけた。
「ガン!!」
車内が凍った。
子供が泣き出す。
さすがに空気が変わった。
乗務警察も即座に態度を強めた。
「これ以上は業務妨害です。降車してください」
しかし夫婦はまだ抵抗。
「横暴だ!」
「老人差別だ!」
と叫び続ける。
でももう誰も味方していなかった。
数分後。
新幹線が大宮駅へ到着。
そのまま夫婦は乗務警察に両脇を抱えられ、強制的に降ろされた。
降りる直前まで、
「訴えてやる!!」
と叫んでいた。
ドアが閉まる。
静寂。
そして誰かが、小さく拍手した。
すると、それが車内全体に広がった。
私は窓からホームを見ながら思った。
最近、“年寄りだから許される”を武器にする人、本当に増えた気がする。
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]