高速のサービスエリアで、私は彼に「運転代わって」と言っただけだった。
6時間以上ハンドルを握りっぱなしで、目の奥が痛くて、もう限界だったから。
なのに彼は助手席で腕を組んだまま、平然と言った。
「は?お前の運転、安心できなくて俺全然寝れなかったんだけど。あと1時間くらいなんだから頑張れよ」
その瞬間、私の中で何かが切れた。
私は無言でエンジンを切り、キーを抜いた。
「寝られなかったのはあなたの都合でしょ。私はもう7時間近く運転してる。事故ったら誰が責任取るの?」
彼は一瞬、ぽかんとした顔をした。
「いや、そんな怒ることじゃ……」
「じゃあ今すぐあなたが運転して。嫌なら今日はここで泊まる。私はもう一メートルも運転しない」
そう言って私はバッグを持ち、車を降りた。
彼が後ろから何か言っていたけれど、振り返らなかった。サービスエリアのコンビニで飲み物を買って、椅子に座った。
もう“機嫌を取る彼女”をやめたかった。
結局、彼はしばらくして渋々運転席に座った。
目的地までの1時間、車内は無言だった。さっきまで私の運転に文句をつけていたくせに、自分が運転し始めると一言も喋らない。
でも、その旅行で分かった。
問題は運転だけじゃなかった。
次の日もそうだった。
荷物を持つのは私。地図を見るのも私。チケット売り場に並ぶのも私。彼はスマホを見ながら、ただ後ろを歩くだけ。
半日歩き回って、足が痛くなった私は言った。
「少し休みたい」
すると彼は、眉をひそめた。
「旅行に来たんだから歩くでしょ。そんなにすぐ疲れる?もうちょっと先まで行こうよ」
私はその場で立ち止まった。
「旅行って、私が全部段取りして、荷物持って、あなたの後ろをついて歩くことじゃないよね?」
彼は面倒くさそうにため息をついた。
その顔を見て、完全に冷めた。
私はスマホを開き、その場で帰りのチケットを取った。
「今日の旅行はここで終わり。あなたは行きたいなら一人で行って。私は帰る」
彼は慌てて止めてきた。
「え、冗談だろ?せっかく来たのに」
「せっかく来たからこそ分かった。あなたといると、私は休めない」
そのまま私は駅へ向かった。
彼から何度も連絡が来たけれど、返さなかった。
帰宅後、私ははっきり別れを告げた。
恋人同士の旅行って、相手の本性が出る。
長距離運転を押しつける人。疲れている相手を見ても気づかない人。自分だけ楽しければいい人。
そんな人と、この先の人生を一緒に走れるわけがない。
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