朝から16時間勤務だった。
深夜、
高校生の患者が運ばれてきて、
そこから私は7時間、
一睡もせず心肺蘇生を続けた。
腕は痺れて、
汗でスクラブは張り付いて、
途中から時間感覚すら消えていた。
でも、
救えなかった。
モニターの波形が止まった瞬間、
親御さんが崩れ落ちて泣いていた。
私は何も言えなかった。
ただ、
その場に立っていた。
……その数秒後。
日勤帯の看護師が、
ナースステーションで笑いながら言った。
「研修医のくせに、
患者亡くなったあとポケーッとしてたよね」
「なんか感情ない人みたいで怖かった〜」
最初は聞き流した。
疲れすぎて、
怒る気力すらなかった。
でも、
それで終わらなかった。
その看護師、
今度は私の直属の上司のところへ行って、
「○○先生、
ちょっと危ないかもしれません」
「患者亡くなったあと、
ずっと立ち尽くしてて…」
「正直、
医者向いてない気がします」
って、
勝手に“問題研修医”みたいに報告していた。
理由は簡単。
私が反論しないから。
大人しいから。
舐められてたんだと思う。
翌朝のカンファレンス。
私は一言も言い訳せず、
資料だけ机に並べた。
・16時間連続勤務記録
・蘇生開始から終了までのログ
・モニター波形
・処置記録
・当直表
全部。
部屋が静まり返った。
私は直属の上司を見て、
静かに言った。
「昨日、
7時間心肺蘇生していました」
「患者さんが亡くなった直後、
立っていたのは“ボーッとしてた”んじゃありません」
「限界だっただけです」
そして、
看護師の方を向いた。
「あなたは最後の10秒だけ見て、
私を“医者に向いてない”と報告したんですよね」
「……まず、
謝ってもらえますか」
空気が凍った。
看護師、
顔真っ白だった。
何か言おうとしてたけど、
声が出てなかった。
主任は資料を最後まで見て、
低い声で言った。
「確認もせず、
個人の印象だけで上司に報告したの?」
その瞬間、
看護師は完全に黙った。
結局、
その場で書面提出。
さらに病棟全体への訂正説明まで入った。
私は最後まで、
怒鳴らなかった。
ただ、
全部事実で返した。
あの日から。
科室で、
私を“反撃しない人間”として扱う人はいなくなった。
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