大学時代に付き合っていた彼女・Aとは、卒業後もしばらく遠距離で交際を続けていた。しかし、お互い忙しくなり、自然消滅。最後に会ってから5年が過ぎ、俺には新しい彼女もできていた。
そんなある日、突然Aが俺のアパートを訪ねてきた。
久しぶりの再会に昔話で盛り上がっていると、Aが突然お腹をさすりながら笑顔で言った。
「私、今妊娠してるの。」
俺は素直に「そうか、おめでとう。幸せなんだな」と祝福した。
するとAは笑ったまま、信じられない一言を口にした。
「その子、君の子だよ。」
思わず冗談だと思って笑った。
「最後に会ったの5年前だぞ?」
だがAは真顔だった。
「本気だよ。責任取って結婚して。」
数日後にはAの両親からも連絡が入り、「娘を妊娠させたなら責任を取れ」と責め立てられる。話は勝手に結婚準備まで進み始め、親族まで巻き込む大騒ぎになった。
俺が何度「5年間会っていない」と説明しても、「言い逃れだ」と聞き入れてもらえない。
追い詰められた俺は、弁護士に相談し、出生後すぐにDNA鑑定を行うことを提案した。
ところが、その話をした瞬間、Aの態度が一変する。
「そんな検査、赤ちゃんがかわいそう!」
「私を疑うの?」
泣きながら拒否し続けたが、俺は一歩も譲らなかった。
そして子どもが生まれ、DNA鑑定を実施。
結果は当然ながら親子関係なし。
鑑定書を突き付けられたAはその場で言葉を失い、家族もようやく事実を受け入れた。
後に分かったのは、A自身も父親が誰なのか分からない状態だったということ。
「一番都合がいい相手」として、5年間一度も会っていなかった俺を父親に仕立て上げようとしていたのだった。
あの日、感情だけで責任を負っていたら、俺の人生は完全に狂っていた。
「信じてほしい」という言葉だけでは、人生を左右する事実は証明できない。
その出来事以来、俺は「証拠より感情」を優先する怖さを、二度と忘れないと思っている。
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