先月、
東京行きの新幹線でのことだった。
私は窓側の指定席で、
ノートパソコンを開いて仕事をしていた。
車内はほぼ満席。
平日の昼間なのに、
スーツ姿の人も多い。
その時、
斜め前に立ったままの若い女性が目に入った。
黒いリクルートスーツ。
就活生だろう。
何度もスマホと切符を見比べている。
その視線の先には、
一人のおじさんが座っていた。
女性は少し戸惑った表情を浮かべながら、
小さく深呼吸した。
そして、
勇気を出すように声をかけた。
「失礼ですが、席をお間違えではありませんか?」
言い方は、
驚くほど丁寧だった。
でもおじさんは、
面倒くさそうに顔を上げると吐き捨てた。
「ん?自由席が満席だったから、こっち来たんだよ」
女性は慌てず、
もう一度説明した。
「こちら、私が予約した指定席なんです」
するとおじさんは、
露骨にイライラした顔になった。
「うるせーんだよ」
車内の空気が変わった。
そして次の瞬間、
信じられない言葉を吐いた。
「若いなら立ってろ。それとも俺の膝に乗るか?」
——最低だ。
周囲が一瞬静まり返った。
でも、
誰も動けない。
注意したい。
でも関わりたくない。
そんな空気が、
車内全体に広がっていた。
私も正直、
どうするべきか迷った。
その時だった。
女性が、
静かに口を開いた。
怒鳴らない。
感情的にもならない。
でも、
はっきりとした声だった。
「わかりました」
「私はこの席の料金を支払い、占有する権利を持っています」
車内の視線が、
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