あの日、私はただ道を歩いていただけだった。
本当に、それだけだった。
昼でも夜でもない、なんとも中途半端な時間。
急いでいたわけでもないし、機嫌が特別悪かったわけでもない。
ただ、いつもの道をいつものように歩いていた。
そして、建物の前で足が止まった。
「……は?」
思わず声が出た。
そこにあったのは、最近やたら増えているLUUPのポートだった。
ミント色の枠で囲われた、あの見慣れた返却スペース。
看板まで立っていて、いかにも「ここに整然と置いてください」と言わんばかりの顔をしている。
でも、その整然の下にあるものを見た瞬間、私は言葉を失った。
点検口。
思いきり、塞いでいた。
いや、塞いでいるなんてレベルじゃない。
ほぼピンポイントで、
「ここ絶対あとで開けることあるやつだよね?」
という設備の上に、まるごとポートをかぶせている。
一瞬、見間違いかと思った。
でも何度見てもそうだった。
コンクリートの上に四角くはめ込まれた点検口。
その上から容赦なく引かれたミント色の区画線。
しかも、返却された車両が置かれたら完全にアクセス不能になる未来が、あまりにも簡単に想像できた。
私はその場でしばらく立ち尽くした。
なんで?
どうして?
誰がこれでOK出した?
頭の中に疑問符が連打される。
もちろん、街中のポート設置なんて、私が知らないルールや調整がいろいろあるのかもしれない。
土地の権利関係とか、道路使用とか、管理会社との話し合いとか。
素人には見えない事情が山ほどあるのはわかる。
でも、だとしても。
点検口を塞ぐなよ。
そこだけは、事情の前に本能で避ける場所じゃないのか。
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