「下手なんじゃない。これ、わざとだ」
そう思ったのは、3回目だった。
うちのマンションの駐車場は、決して広くない。
でも、普通に停めれば普通に乗り降りできる。
それなのに隣のフォレスターだけは、毎回なぜか左に寄る。
しかも、少しだけ。
最初は偶然だと思った。
次は、まあ運転が苦手なのかもしれないと思った。
でも3回目で分かった。
あの人は、自分が広く降りるために、こちら側へ寄せている。
たった19cm。
数字にすれば、本当にそれだけ。
でもその19cmのせいで、私の軽はドアが9cmしか開かなくなる。
9cmって、想像以上に狭い。
バッグを先に車内へ投げ込んで、
体を斜めにして、
息を止めるみたいにして乗る。
子どもを抱えている日は、さらに地獄だった。
ある雨の日。
買い物袋を片手に持って、子どもを抱えて駐車場に戻った。
見た瞬間、嫌な予感がした。
また左に寄っている。
私の車のドアは、ほとんど開かなかった。
子どもは雨でぐずっている。
荷物は濡れる。
傘はうまく差せない。
それでも乗るしかないから、私は9cmの隙間に体をねじ込んだ。
その時、同じ列の奥さんがこちらを見て、
「またですか……?」
と小さく言った。
その声で、逆に冷静になった。
やっぱり、私だけが気にしすぎているんじゃない。
隣のフォレスターの持ち主は、いつも何事もなかったように降りていく。
自分のドアは大きく開く。
こちらは見ない。
一言もない。
何度か、直接言おうとした。
でも、こういう人に感情のまま言っても、たぶん伝わらない。
「そっちが小さい車だからでしょ」
「こっちも枠内ですけど」
「証拠あります?」
そう返されるのが目に見えていた。
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