仕事を終えて夜の街を歩いていた私。
いつも通る路地を曲がると、目の前で足が止まった。
一台のワンボックスカーが、異様な姿になっていたのだ。
フロントガラスから屋根にかけて、大きな手書きの紙がびっしりと貼られている。
一見すると、まるで車が動かないように封印されているかのようだった。
近づいて見ると、紙にはこう書かれている。
「生 明弘(30)を捜しています。住所・勤務先・予約の方はご連絡ください」
手書きの文字は太く、大胆で、雨に濡れた部分は少しにじんでいる。
車の角度や貼られ方を見ると、貼った人は慎重に、しかし圧迫感を最大化するように配置しているのが分かる。
文字と紙の量が尋常ではない。
私は思わず心の中でつぶやいた。
「これは……見せしめ?それとも情報の緊急性?」
通り過ぎる人たちも、次々と車に目をやる。
「なにこれ……」
「誰か探してるの?」
声にならないざわめきが、夜の路地に漂う。
車の持ち主は不在のようだ。
フロントドアはロックされ、室内は暗い。
でも、紙は剥がされていない。
どうやらこの状態を維持することに意味があるらしい。
私はスマホを取り出して、まず写真を撮った。
一枚、二枚、屋根まで撮影していく。
こういう異常事態は、証拠として残しておく必要がある。
もしかしたら、警察や管理者に連絡することになるかもしれない。
近くのコンビニから出てきた人も車を覗き込む。
「なにこの車……」
「誰を探してるんだ?」
話題はすぐに周囲に広がった。
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