「“仕事があるので電源使わせてください”と言った人が、PCを開いたまま熟睡していた。しかも荷物は私の席まで侵入していた。」
東海道新幹線のS Work車両での話。
私はA席。
隣のC席に座った女性が、乗ってすぐ声をかけてきた。
「すみません、仕事があるので電源使わせてもらってもいいですか?」
私はモバイルバッテリーを持っていたから、
「いいですよ」と答えた。
それが、全部の始まりだった。
気づいたら、空いているB席は完全に彼女の“荷物置き場”になっていた。
大きなバッグ。
外したコート。
パソコンバッグ。
座席一つ分、丸ごと占領。
しかも、それだけじゃない。
バッグの一つはB席からはみ出して、
私のA席の座面ギリギリまで迫ってきていた。
足元を見ると、さらにひどい。
電源コードがB席から伸びて、
私の足元を横切っていた。
足の置き場がほとんどない。
でも私は何も言わなかった。
だって彼女は、はっきり言っていたから。
「仕事があるので」
そう言われたら、仕方ないと思った。
ところが。
数分後。
ふと横を見ると、
彼女はもうパソコンを開いたまま——
熟睡していた。
しかも、アイマスク。
さらに小さく、
ぐう……ぐう……
完全に寝ている。
仕事どころじゃない。
机の上には開いたままのPC。
コードは私の足元を横断。
B席は荷物の山。
私は思わず、スマホを取り出して
一枚写真を撮った。
ここまで来ると、さすがに笑えてくる。
最初は我慢していたけど、
だんだん腹が立ってきた。
私は軽く身を乗り出して言った。
「電源使わないんでしたら、私も充電したいので抜きますね。」
彼女は寝たまま。
ぐう……ぐう……
返事なし。
私はそのまま、
コンセントを抜いた。
しばらくして。
パソコンの画面が暗くなった瞬間、
彼女がびくっと体を起こした。
アイマスクを外して、
机の上のPCを見る。
「えっ?」
それから私の方を見て、言った。
「電源どうしたんですか?」
そしてすぐ、
「これ、もしお客さんから連絡来てたらどうするんですか?」
私は肩をすくめた。
「さあ……」
一拍置いて答えた。
「私、寝てましたから。気づきませんでした。」
彼女は一瞬、言葉を失った。
それから慌ててコードを差し直す。
電源ランプがつく。
PCが起動。
彼女は焦った声で小さくつぶやいた。
「やばい、やばい……」
キーボードを必死に叩く。
そしてすぐ、画面に向かって言った。
「すみません、今戻りました……!」
誰かに謝っている。
さっきまで熟睡していた人とは思えない勢いで
キーボードを叩いている。
その間に、彼女は
B席の荷物を慌てて足元へ下ろしていた。
私の足元は、やっと空いた。
私は何も言わず、
静かに自分のPCを開いた。
そして思った。
さっきまで寝ていた人とは思えない慌てぶりだった。
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