生後2か月の甥っ子の頭に、
白いかさぶたのようなものが広がっていた。
細かいフケみたいなものが、
頭皮にびっしり張り付いている。
「これ…大丈夫なの?」
思わず声に出た。
すると、隣にいた義母がそれを見て、
すぐに言った。
「ちゃんと洗ってないからよ」
その一言に、空気が変わった。
「母親が怠けてるから、こうなるの」
はっきり言い切った。
その場にいた全員が、
一瞬黙った。
私は違和感しかなかった。
本当にそうなのか?
なんとなく、触ってはいけない気がした。
でも——
「ほら、こうやって取ればいいのよ」
義母はキッチンから
オリーブオイルとガーゼを持ってきた。
迷いがなかった。
そのまま、甥っ子の頭に手を伸ばす。
「ちょっと待って…」
言いかけたときには、もう遅かった。
ゴシゴシと、
遠慮なくこすり始めた。
白いかさぶたは、
ポロポロと剥がれ落ちていく。
「ほら、きれいになったでしょ」
満足そうに言った。
確かに見た目は、
さっきより“きれい”になっていた。
でも、胸の奥に嫌な感じが残った。
その夜。
甥っ子は突然、
火がついたように泣き始めた。
いつもと明らかに違う。
抱っこしても、
あやしても、全然泣き止まない。
額に触れると——熱い。
頭を見ると、
昼間こすっていた部分が
真っ赤に腫れていた。
「おかしい…!」
すぐに病院へ連れて行った。
診察室。
医師は頭皮を見た瞬間、
静かに表情を変えた。
そして、はっきり言った。
「これは乳児脂漏性湿疹ですね」
聞き慣れない言葉だった。
「生後数ヶ月の赤ちゃんによくあるものです」
「皮脂が多い時期に、一時的に出るものなので」
少し安心しかけた、その瞬間——
医師は続けた。
「ただし」
「無理に剥がしてはいけません」
空気が止まった。
「こすったりすると、炎症を起こします」
「だから今、赤く腫れているんです」
誰も何も言えなかった。
あの昼間の光景が、
そのまま頭に浮かんだ。
でも——
義母はすぐに口を開いた。
「ほらね、だから言ったでしょ」
「ちゃんと世話しないからこうなるのよ」
思わず、耳を疑った。
今の説明、聞いてた?
原因は“こすったこと”だって、
はっきり言われたのに。
それでも、認めない。
全部、母親のせいにする。
その瞬間、はっきり思った。
これは“無知”じゃない。
“責任を認めない人”なんだと。
その後、甥っ子は数日間、
頭の炎症と痛みでぐずり続けた。
少しずつ落ち着いていったけど、
あの赤く腫れた頭皮は忘れられない。
あとで調べて分かった。
乳児脂漏性湿疹は、
多くの場合、放っておけば自然に治る。
どうしても気になるなら、
優しく洗って、ふやかして、
無理なくケアするだけでいい。
それか、病院に行けばいい。
——触らなければよかった。
止めていればよかった。
何度もそう思った。
「ちゃんとしなきゃ」が、
一番危ないこともある。
しかも——
間違った人ほど、
最後まで自分のせいにしない。
これ、知ってた?
それとも、
同じことやりそうになったことある?
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