仕事終わり。
体が重いまま、スーパーに寄った。
足りないものだけ買って、
急いで帰る。
家に着いたら、そのまま台所。
誰もやってくれないから。
今日も、私がやる。
子どもが好きそうな味、考えて、
時間かけて作った。
やっと並べた。
「できたよ」
声をかけた瞬間だった。
子どもが、顔をしかめた。
「……これじゃない」
「え?」
「カップラーメンがいい」
一瞬、意味が分からなかった。
「え、でも今日ラーメンないよ?」
「あるやつじゃない」
「○○の味がいい」
(……それ、さっき売り切れてたやつ)
「じゃあこれ食べよう?」
「やだ」
「ラーメンがいい」
「これいらない」
——ここで、何かが切れた。
無言でキッチンに戻る。
お湯を沸かす。
あるやつでいいって言ったよね、と思いながら。
カップラーメンを出す。
作る。
テーブルに持っていく。
ドンッ。
「じゃあそれ食べなよ」
子ども、固まる。
「やっぱりいらない……」
「ご飯食べる……」
——でも、止まらなかった。
「食べるって言ったんだから食えよ!」
「お湯も入れたし!」
「残すなよ!」
自分でも分かるくらい、声が強かった。
子ども、びっくりして泣き出す。
それでも私は止まらなかった。
子ども、
ラーメンの前で泣いてる。
でも、食べない。
ずっと泣いてる。
その姿を見て、
胸が痛いのに、
それでも引けなかった。
(ここで折れたら、全部無駄になる気がした)
私はそのまま、別の部屋に行った。
ドアを閉めた瞬間、
力が抜けた。
涙が一気に出た。
(なんでこんなことになるの)
今日も、
仕事して、
買い物して、
ご飯作って。
全部、一人でやった。
誰もいない。
誰も手伝わない。
それでもやってるのに。
外から、
子どもの泣き声。
止まらない。
ラーメンをすする音は、しない。
そのとき、
スマホが鳴った。
夫からのLINE。
「ちゃんとご飯食べさせてる?」
……は?
その一文で、
頭が真っ白になった。
(“ちゃんと”って何)
(全部やってるけど)
返事、打てなかった。
そのままスマホを置いた。
しばらくして、
リビングに戻った。
テーブルの上。
ラーメン、手つかず。
完全に伸びてる。
子ども、
椅子に座ったまま、
泣き疲れてた。
目、真っ赤。
私を見る。
そして、小さな声で言った。
「……ママのご飯、まずいもん」
一瞬、息が止まった。
「ラーメンのほうがいい」
「だからいらない」
……さっきより、刺さった。
何も言えなかった。
ただ、
立ったまま動けなかった。
そのあと、
子どもはソファに移って、
そのまま寝た。
泣きながら。
顔ぐしゃぐしゃのまま。
私は、
片付けもできずに、
ただ立ってた。
さっきの声が、頭の中で何度も流れる。
「食えよ!」
「二度と作らないからな!」
——次の日。
朝。
子どもは何も言わなかった。
「行ってきます」も、
少し小さかった。
私も、
何も言えなかった。
昨日のこと、
触れられなかった。
玄関のドアが閉まったあと、
静かになった部屋に、
昨日の言葉だけが残ってる。
「まずいもん」
「いらない」
「食えよ!」
……ねえ、
これ、
私が悪いの?
それとも、
ここまで追い込まれても、
優しくできない私が、
母親としてダメなの?
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