退職届を書いたのは私なのに、完成させたのは職場の連中だった。
机に戻ってきた私が最初に見たのは、きれいに用意していたはずの封筒じゃなかった。
そこには、でかでかと意味不明な文字が並んでいた。
「日本仕込」
「退職届」
「もちりおいしい日本の食パン」
数字まで囲われていて、もはや何の儀式なのかも分からない。
一瞬、意味が理解できなかった。
でも、周りのニヤニヤした顔を見て、すぐ分かった。
ああ、やられたんだ、と。
「え、なにこれ?」と聞いた私に、同僚は笑いながら言った。
「どうせ辞めるんだし、これでよくない?」
「逆に思い出になるじゃん」
「ウケると思って」
その軽さに、腹の底がすっと冷えた。
怒鳴る気にもなれなかった。
ショック、というより、妙に納得してしまったからだ。
ああ、この会社って最後までこうなんだな、って。
私はこの会社でずっと、雑に扱われる側だった。
急ぎでもない雑務を押しつけられるのはだいたい私。
誰かがやりたがらない面倒な作業も、なぜか自然に私のところへ回ってくる。
残業も当たり前。
フォローも当たり前。
尻ぬぐいも当たり前。
でも評価されるのは、声の大きい人だった。
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