やっとだ。長年のお願いが通じ、駐車場の線が15センチだけ通路側に広がったと聞いたとき、心の中で小さくガッツポーズをした。「これでやっとストレスなく車を出せる」と思ったのも束の間だった。
駐車場に到着し、自分の車を壁側に停めた瞬間、目に飛び込んできたのは、隣の車のミラーがまったく畳まれていない光景だった。15センチ広くなったはずの通路が、ほぼ以前と同じ状態で塞がれている。思わず心の中で叫んだ。「なにこれ!一年半も待った意味は!?」
隣人はいつも通り、無言で車から降りもしない。いや、これは無意識の怠慢なのか、完全なる嫌がらせなのか、もう区別もつかない。無言の圧力、生活空間を侵害されている感覚が、じわじわと怒りとなって胸に溜まっていく。
このまま黙ってはいられない。まずは証拠だ。スマホを取り出し、古い線と新しい線の差、通路側の空間の変化、隣のミラーの位置をすべて撮影。あとで不動産管理会社に提出するために、証拠は完璧に揃えておく。写真を撮りながら、目の前の現実と自分の努力の差に唖然とした。
「これで何とかなるか…」と思いながら、不動産に再度連絡。
1年半もかけて改善してもらった15センチの線を、無視されていることを丁寧に説明する。電話口の担当者も少し驚いたような声で、「これは…すぐに確認します」と返答。やっと動きが出る兆しが見えた瞬間だった。
翌日、管理会社が現場に来て隣の車のミラー位置をチェックし、通路を確保するための指示を出した。隣人は無言のまま、仕方なくミラーを畳む。15センチだけの微調整だが、その差は歴然。車を出す時のストレスは、確実に減った。
車に乗り込み、ゆっくりと通路を抜ける瞬間、心の中で小さくガッツポーズをした。長年の小さな戦いがついに実を結んだ。隣人がどう思っているかは知らない。しかし、生活空間を取り戻した勝利感は確かに俺のものだ。
今後も、この駐車場で安心して車を出し入れできると思うだけで、週明けのストレスも少し和らぐ。15センチの戦争は終わった。しかし、隣人との微妙な心理戦はまだ続くかもしれない…だが、今日はもう、それを考える必要はない。俺は勝ったのだ。