朝8時03分。
私はいつものように車庫のシャッターを上げた。
だが、目の前に広がった光景に、全身が凍った。
白いSUVが、私の車庫の前で完全に止まっていた。
一センチも動かせない。
三か月かけて詰めた大口の契約日。
今日、この一本の契約で、今月の資金繰りが安定するはずだった。
クラクションを鳴らす。
反応なし。
車内は空っぽ。
私はすぐに110番した。
警察が到着し、写真を撮り、ナンバーを照会する。
しかし、言われたのはいつもの一言だった。
「緊急性が認められませんので、レッカーはできません」
緊急じゃない?
私の仕事は止まっている。
この契約は時間指定。
代わりは効かない。
8時20分、取引先に電話する。
「申し訳ありません、車が出せず遅れます」
数秒の沈黙。
そして、ついに告げられた。
「今回は見送らせてください」
終わった。
9時05分。
ようやく車の持ち主が現れた。
コンビニの袋をぶら下げ、片手にコーヒー。
「すみません、ちょっとだけのつもりで」
ちょっと、って……?
私の午前中はすべて消えた。
契約も、信用も、準備した時間も、全部。
そして、彼は言った。
「えー、9000円か」
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