夜ご飯前、
三男がソファの裏に隠れて饅頭を食べていた。
最初に見つけた時、私は思わず笑いそうになった。
「なにしてるの?」
そう声をかけた瞬間だった。
三男はビクッと肩を震わせ、
慌てて饅頭を後ろに隠した。
その顔が、あまりにも怯えていた。
「……怒られると思った」
その一言に、
私はなぜか胸がざわついた。
普通、子どもって、
“お菓子を勝手に食べたこと”を隠す。
でもこの子は違った。
“食べてる姿そのもの”を隠していた。
私はその時、
初めて違和感を覚えた。
思い返せば、最近おかしかった。
食卓で、三男だけ異常に食べるのが早い。
誰よりも早く食べ終わって、すぐ席を立つ。
好きだった唐揚げの日も、
「もういらない」と言う。
でも夜になると、
キッチンの隅でパンをかじってたり、
冷蔵庫の裏にお菓子の袋が落ちてたりした。
最初は、
「隠れて食べる年頃なのかな」
くらいに思っていた。
でも違った。
ある日の夕飯。
兄たちがふざけながら言った。
「また三男だけ先に食うなよ〜」
「どうせ全部食うんだからさ」
笑いながら。
軽いノリで。
でもその瞬間、
三男の顔色が変わった。
箸が止まり、
急に下を向いた。
その姿を見た時、
全部繋がった。
——この子、
“食べたら怒られる”んじゃない。
“いっぱい食べる自分は嫌われる”って思ってる。
私は一気に血の気が引いた。
「ちょっと待って」
食卓の空気が止まった。
兄たちはキョトンとしている。
私は静かに聞いた。
「それ、いつから言ってた?」
「え?」
「“どうせ全部食う”って、ずっと言ってた?」
長男が苦笑いしながら言った。
「いや、冗談じゃん」
その瞬間、
私はソファの裏から見つけた饅頭の袋をテーブルに置いた。
「この子、隠れて食べてたんだよ」
空気が凍った。
兄たちの顔から笑顔が消える。
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