帰国して、スーツケースの取っ手をまだ握ったまま。
玄関の前で、身体が固まりました。
鍵が回らない。
「引っかかる」じゃない。
内側から“止められてる”感触。
……え?
中に、誰かいる?
ドアの隙間には、ぐしゃっと丸まったレシート。
時間を見る。私の着陸後20分。
背中が冷えていくのに、頭だけ異常に冴えてました。
私は叫ばない。叩かない。
先にスマホを構える。
動画で撮る。鍵穴、ドアノブ、時間表示。
それから110番。
「不法侵入です。いま家の中に人がいます。帰国したばかりで、内側から施錠されています。」
電話を切った直後から、手が勝手に動きました。
空港の到着写真。タクシー履歴。位置情報。
管理会社に電話して、**廊下の防犯カメラを“保全”**してもらう。
この瞬間に分かったんです。
“気持ち”で戦うと負ける。
“記録”なら勝てる。
警察が来て、ドアが開きました。
出てきたのは中学生くらいの子。
言葉が通じない様子で、視線を泳がせている。
私はまず、部屋を見ました。
クッションはずれて、テーブルに水。
玄関の靴が乱れてる。
「被害届、出します。」
筆録の警察官は淡々と頷いた。
私は少しだけ息を吐いて、椅子に座る。
……その数分後です。
別の警察官が入ってきて、低い声で言いました。
「相手が未成年で、日本語が分からないみたいだから……被害届は出さない方向でお願いできないかな。
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