10年前、付き合っていた彼から、ある日突然連絡が途絶えた。
3年付き合っていた。
結婚も意識していた。
私の両親にも紹介した。
両親も「あの子なら」と認めてくれていた。
その彼が、ある日、消えた。
LINEは既読がつかなくなった。
電話は出なくなった。
家を訪ねても、引っ越していた。
職場に電話したら「退職しました」と言われた。
共通の友達も、誰も連絡先を知らなかった。
文字通り、地上から消えた。
私は、毎日泣いた。
何か悪いことをしただろうか。
他に好きな人ができたんだろうか。
私のことが、嫌いになったんだろうか。
理由がわからないまま、3年が経った。
5年が経った。
10年が経った。
私は別の人と結婚して、子供も生まれた。
幸せな日常を送っていた。
それでも、たまに、思い出した。
「あの人、今、どこで何してるんだろう」って。
そんなある日、家のポストに、見覚えのない封筒が入っていた。
差出人の名前を見て、私は、その場で立ち尽くした。
10年前に消えた、彼の名前だった。
手紙は、まだ続いていた。
「消えた後、僕は地元の田舎に帰りました」
「両親と一緒に、闘病生活を始めました」
「あの日、君と別れてから、君のことを一度も忘れたことがありません」
「君のSNSは、ずっと見ていました」
「結婚式の写真、見ました」
「ウェディングドレス、本当にきれいだった」
「お子さんが生まれた時の投稿も、見ました」
「君が、家族と笑っている写真を見て」
「『ああ、僕の選択は、間違っていなかった』と思えました」
「君が幸せでいてくれること、それが僕の10年間の支えでした」
「ありがとう」
「最後にひとつだけ、言わせてください」
「あの3年間、本当に、本当に、幸せでした」
「君と過ごした時間が、僕の人生の宝物です」
「君と出会えて、本当によかった」
「君に愛されて、本当によかった」
「君を、愛せて、本当によかった」
「お元気で」
便箋の最後に、震える字で、彼の名前が書かれていた。
封筒の中には、もう1枚、紙が入っていた。
彼の家族からのメッセージだった。
「息子は、3ヶ月前に旅立ちました」
「『あの人に、これを渡してほしい』と、何度も頼まれていました」
「ようやく、約束を果たせます」
私は、その場に座り込んで、何時間も泣いた。
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