あの日は、ちゃんと早く出た。
そこがまず大事だ。
寝坊してない。
二度寝もしてない。
ぼんやりして電車を逃したわけでもない。
私は保育士資格取得の講習の日だから、前の晩から荷物をそろえて、服も決めて、何度も時間を確認して、むしろ少し余裕を持って家を出た。
気合いは十分。
準備も十分。
やれることは、全部やった。
なのに、駅で全部ひっくり返った。
改札を抜けた先の電光掲示板に、無機質な文字が光っていた。
人身事故。
遅延。
運転見合わせ。
見た瞬間、胃がきゅっと縮んだ。
嘘でしょ、今日。
よりによって今日なの。
ホームはざわざわしていた。
駅員さんの案内はマイク越しで割れていて、内容より先に「現場がもう大混乱です」という空気だけが伝わってくる。
周りの人たちも、スマホを見て顔をしかめたり、ため息をついたり、もう諦めた顔で壁にもたれたりしていた。
私はその場で検索した。
別ルート。
振替輸送。
バス。
徒歩。
使えるものは全部頭に並べた。
でも、こういう時って、街全体が事故の余波で詰まる。
みんな一斉に別ルートへ流れるから、逃げ道まで混む。
タクシー乗り場には列。
道路は渋滞。
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