その日、私は朝から最悪だった。
鼻は詰まる。
喉は重い。
頭もぼんやりする。
こういう時の世界は、全部が少しうるさい。
駅の音も、車の音も、人の声も、普段の一・五倍くらい神経に触る。私はそんな身体を引きずって、いつもの耳鼻科へ向かった。
何度も行っている場所だった。
だから油断していた。
受付は十三時まで。
私はそう覚えていた。
時計を見たら十二時一分。
ギリギリだけど間に合う。
そう思って、少しだけ安心しながらカウンターに立った。
待合室は静かだった。
消毒液の匂い。
壁の時計の秒針。
小さく流れるテレビ。
受付の人の事務的な声。
私は保険証を出して、名前を言った。
すると受付の人が、申し訳なさそうでもなく、ただ事実だけを置く声で言った。
「午前の受付は終了です。また午後に来てください」
私は一瞬、何を言われたのかわからなかった。
終了?
いや、ちょっと待ってくれ。
十三時までじゃなかったのか。
「え、いつもは一時までですよね?」
そう聞くと、受付の人は淡々と答えた。
「本日はシステム変更のため、午前の受付は十二時までとなっております」
その時だった。
私はカウンターの前に立てられた紙に気づいた。
白い紙。
黒い文字。
そして赤で、やけに目立つ
12:00
午前の受付は12:00で終了しております。
ちゃんと書いてある。
逃げ道のない字で。
しかも赤で。
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