あの日の朝は、空がやけに明るかった。
信号は青。
風は軽い。
路面も乾いていた。
私はいつものようにロードバイクにまたがっていた。
自分で少しずつ仕上げた、カスタムだらけの一台だった。
フレームの色。
ホイール。
コンポ。
細かいパーツの角度まで、全部それなりに理由がある。
乗れればいい、じゃない。
自分の癖と気分と見た目を、金と時間で無理やり形にした塊だ。
正直、ただの自転車じゃなかった。
私にとっては、かなり大事な相棒だった。
その日も機嫌よく走っていた。
ペダルは軽い。
足も回る。
「ああ、今日なんか調子いいな」と思った、その直後だった。
横から、軽バンが来た。
白い車体。
ぬるっとした動き。
嫌な予感だけが先に来た。
次の瞬間、視界がひっくり返った。
鈍い音。
ブレーキの悲鳴。
身体が投げ出される感覚。
地面が近い。
硬い。
痛い。
息が一瞬で抜けた。
何が起きたのか整理できないまま、私はアスファルトの上で目を開けた。
耳鳴りがしていた。
遠くで誰かが何か言っている。
けれど、最初に目に入ったのは自分の身体じゃなかった。
自転車だった。
バキバキだった。
フレームの角度がおかしい。
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