娘の高校の入学資料を机に広げたとき、私はまず深呼吸をした。
いや、正確に言えば。
深呼吸しないとやっていられなかった。
紙が何枚もある。
説明が細かい。
文字は丁寧。
表も整っている。
いかにも「きちんとしています」という顔をして並んでいる。
でも、こっちはもう知っている。
こういう紙の束の本体は、だいたい文字じゃない。
金額だ。
私は一枚ずつ確認した。
制服の一覧。
ブレザー。
スカート。
ズボン。
シャツ。
ネクタイ。
必要購入品。
希望購入品。
見れば見るほど、逃げ場がない。
そして、合計を出した瞬間、私は静かに固まった。
娘の高校の制服代。
公立高校。
その金額、七万三千三百二十円。
私は紙を持ったまま、数秒、天井を見た。
公立、だよね?
私立じゃなくて?
どこかに高級ホテルのドレスコードでも紛れ込んでる?
いや、ちゃんと公立高校だった。
しかも終わらない。
もちろん終わらない。
そんな優しい話ではない。
続いて、体操服。
運動靴。
合わせて二万二千三百八十円。
ここで私は一度、笑った。
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