ボーナスが出た日、私は少しだけ機嫌がよかった。
朝から妙に空気が軽かった。
会社の廊下まで、いつもより明るく見えたくらいだ。
単純だな、と自分でも思う。
でも仕方がない。
「賞与支給日」という四文字には、それだけの破壊力がある。
私は昼休み、スマホを取り出して明細を開いた。
机の上にはぬるくなったコーヒー。
窓の外はぼんやり曇り空。
なのに私の気分だけは、ちょっと晴れていた。
よし。
今回は新しい時計でも買おうかな。
前から欲しかったのだ。
別に何十万もする高級時計じゃない。
でも、少しちゃんとしたやつ。
仕事でも使えて、ふと手元を見た時に気分が上がるようなやつ。
そういう小さなご褒美があってもいいだろう、と私は珍しく前向きだった。
頑張ったし。
忙しかったし。
理不尽なことも飲み込んだし。
笑顔でやり過ごした日も多かった。
だから今日は、自分に少しくらい何かあげてもいい。
そう思いながら、私は明細の数字を追った。
総支給額。
なるほど。
うん、悪くない。
さすがボーナス。
この瞬間だけは会社に対して少し優しくなれる。
ありがとう、という気持ちが一ミリだけ湧く。
だが、その一ミリの感謝は、次の瞬間に吹き飛んだ。
私は目を止めた。
そして、二度見した。
さらに、スマホを顔に近づけた。
所得税。
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