朝、目が覚めない。
布団の中で体が重い。
冬の朝、寒さが骨まで染み込む。
でも、寝室のドアが開く音。
小さな足音が、静かに近づいてくる。
「お母さん、コーヒー淹れたよ。起きれそう?」
寝ぼけ眼で目を開けると、息子が両手でマグカップを持っている。
小さな手で精一杯バランスを取りながら、慎重に持ってきてくれたのだ。
マグカップには、うっすらと湯気が立ち上る。
「うま…」
思わず涙が出そうになる。
息子は小学校三年生。
まだまだ手先は不器用だ。
でも、コーヒーメーカーの説明書を読みながら、自分で淹れてくれたらしい。
「説明書通りにやったよ」
恥ずかしそうに笑うその顔に、胸が熱くなる。
私は布団から手を伸ばしてマグを受け取る。
湯気と共に、香ばしいコーヒーの香り。
小さな息子が、初めて淹れてくれたコーヒー。
一口飲むと、苦さの中に愛情が溶け込んでいるようだった。
そして、頭の中に冬の夜の記憶がよみがえる。
妊娠中のある夜、元夫がこう言った。
「タバコ買ってきて」
寒い外に出る私。
息子のお腹を抱えて、夜中の街を歩く。
手はかじかみ、息は白くなる。
心の中で、泣きそうになったのを覚えている。
今、息子が私にコーヒーを持ってきてくれたその瞬間、
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