今日、役所に来たのは、本当に最後の手段だった。
病気で働けなくなって、収入はほとんどない。
年金は月に7万円だけ。
家賃も何ヶ月も払えていなくて、
正直、いつ住む場所を失ってもおかしくない状態だった。
食べるものも、ほとんど残っていない。
それでも、どうにかなるかもしれないと信じて、ここに来た。
順番を待って、やっと呼ばれて、席に座った。
自分の状況を一つずつ説明した。
「病気で働けなくて……」
「家賃も滞納していて……」
「今日食べるものもなくて……」
言葉にするたびに、自分の状況がどれだけ追い詰められているのか、改めて突きつけられるようだった。
それでも、伝えないといけないと思った。
でも——
返ってきたのは、あの一言だった。
「働いて立て直す見込みがないと、支援は難しいです」
その瞬間、何かが切れた。
今までなら、何も言えずにうなずいていたと思う。
「そうですか」と言って、そのまま帰っていたかもしれない。
でも、今日は違った。
私は静かに言い返した。
「働けないから、ここに来ているんです」
職員は一瞬、言葉を詰まらせた。
私はそのまま続けた。
「働ける見込みがない人は、助けてもらえないんですか?」
部屋の空気が少し変わったのが分かった。
それでも、職員はすぐに言葉を選びながら答えた。
「いえ、そういうわけではなくて……制度上の条件が……」
私は止めなかった。
「今日、食べるものもないんです」
「それでも、“見込みがないから無理”で終わりなんですか?」
声を荒げたわけじゃない。
でも、自分でも分かるくらい、言葉に力が入っていた。
しばらく沈黙が流れた。
そのあと、職員は少し態度を変えた。
「少しお待ちいただけますか」
そう言って席を立ち、奥へ行った。
戻ってきたときには、別の職員も一緒だった。
さっきまでとは明らかに違う空気だった。
そこから話は変わった。
「別の制度も含めて確認させてください」
「緊急的な支援についても検討します」
最初に言われた「難しい」という一言とは、明らかに違う対応だった。
正直、最初からそうしてほしかったと思った。
制度があるのは分かる。
簡単に判断できない事情があるのも分かる。
でも——
声を上げなければ、ここまで動かなかったのも事実だった。
あのまま何も言わなかったら、どうなっていたのか。
考えるだけで怖くなる。
助けを求めて来た場所で、
条件に合わないと言われて、そのまま帰される。
それが現実だとしたら、
あまりにも厳しすぎると思う。
私は特別なことを求めたわけじゃない。
ただ、今この状況をどうにかしたかっただけ。
それだけだった。
それなのに、「見込みがない」で終わらせられそうになった。
今日、初めて思った。
黙っていたら、本当に何も変わらない。
どれだけ苦しくても、
言わなければ伝わらない。
そして——
助けを求める側が、ここまで覚悟を決めないといけない現実って、
本当にこれでいいのかと思った。
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