夜の22時過ぎ、仕事を終えて疲れた体でマンションの駐車場へ向かった。いつもの自分の契約スペース――なのに、そこには見知らぬ黒い車が鎮座していた。思わず息を呑んだ。「え、何これ…?」頭の中が一瞬で真っ白になった。
番号も場所も間違っていない。間違いなく私の契約駐車場だ。周りを見渡しても、持ち主らしき人影はない。もうね、心の中は怒りと疲労でパンパンになった。とりあえず管理会社に電話した。もちろん、出ない。土曜の夜だ、想定内とはいえイライラが増すばかり。
「どうすれば…?」途方に暮れながら、車の前でじっと待つしかなかった。10分経っても誰も来ない。通路を塞いだら他の住民に迷惑がかかる。結局、少し離れた場所に車を停め、歩いて帰る羽目になった。ふぅ…疲れた体に鞭を打ちながら、心の中で「なんで私が…」とつぶやいた。
翌朝、目覚めて駐車場を見に行くと、まだあの黒い車はそこにあった。舌打ちをしてしまう。どうしたものか、と考えあぐねて、警察に電話してみた。「私有地なので、すぐに介入は難しい」と言われたけど、車の名義は確認できるらしい。
結局、直接は動けない。だけど、警察は言った。「張り紙で注意するのは問題ありません。常識の範囲であれば大丈夫です」と。
その瞬間、私の中で決意が固まった。仕事に行く前に、車のフロントガラスに手書きの紙を置いた。内容はシンプル。「ここは契約駐車場です。勝手に停めないでください。迷惑しています。」強めに書きたかったけど、あくまで冷静さを保った。これで、私の意思は伝わるはず。
仕事中も心はモヤモヤしたままだった。でも、夜に帰宅して駐車場に近づくと…驚いた。あの黒い車は消えていた。代わりに、フロントガラスには紙が貼られていた。内容はほぼ私が昨日書いたものと同じ。ただ最後に「迷惑します」とだけ書かれていた。
謝罪でもない、ただの注意書き。正直、最初は呆れた。でも、よく考えてみると、これで終わりなんだと理解した。車主はもう二度と私のスペースを侵さないだろう。勝手な言い訳も、堂々と居座る態度も、全て消えた。私が冷静に対処した結果、秩序は守られ、正義は静かに降りてきたのだ。
あの紙を見つめながら、心の奥に残ったのは怒りでも不満でもない。
達成感だった。深夜に戦った私の小さな正義が、結果として勝利をもたらした瞬間だった。もう二度と、誰も私の契約スペースに勝手に停められることはない。これが、私の駐車場での逆襲だった。