今日の昼、電話が鳴った。
「今夜19時半から2名で予約お願いします」
最初は普通の予約かと思った。俺は笑顔で「承知しました」と答えた。だが、電話の番号を見てふと疑問が湧いた。東京から?この番号…普段の常連じゃない。
切った直後、なんとなく検索してみる。
今日だけでアクセスが異常に多い。
「あれ、もしかして…」嫌な予感が胸をよぎる。
夜になった。
19時半。店は静か。
待てど暮らせど、予約の客は来ない。
時計の秒針の音だけが妙に耳につく。
スマホを握りしめ、番号をもう一度確認する。やっぱり東京の番号。
そして俺の中で答えが固まった。これは「いたずら」だ。いや、正確には「ナンパ詐欺」系のドタキャンだ。
思い返す。
電話口の声は少し甘く、丁寧で、でもどこか作られた感じがした。
普通の予約ではない。「今日だけでアクセスが多い」という事実が、それを裏付けている。
店のカウンターから見える窓の向こう、外は普通に日が落ち始め、夜の街の灯りがちらほらつき始めている。
その静けさが、逆に俺の苛立ちを増幅させた。
俺は深呼吸を一つ。
「こういうやつらは、こちらの準備を見越してキャンセルするんだ」
過去の経験がフラッシュバックする。予約を入れておいて、現れず、アクセス数だけでこちらの気を削ぐ。
「無駄足を踏ませて、時間を奪う」
世の中には、こういう小狡い奴らがいる。
しかし、俺は腹をくくった。
「来なかったら来なかったで、客層の質も守れる」
イライラはしたが、冷静に考えれば、現れない方が店にとって安全だったのだ。
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