血の跡がついたヴェルファイアが、駐車場に捨てられていた。
しかも、某パチンコ店の一番奥。
三日間、誰も取りに来ない。
高級車だ。
ロックもしてある。
だが、フロントバンパーは割れ、左側に赤黒い擦過痕。
ただの放置じゃないと、すぐに分かった。
私は店の管理を任されている。
監視カメラを確認した。
深夜2時17分。
そのヴェルファイアは、ゆっくりと入ってきた。
ヘッドライトが一瞬揺れる。
駐車。
エンジン停止。
運転席から男が降りる。
慌てている。
周囲を見回す。
トランクを開ける。
何かでバンパーを拭いている。
だが、拭ききれていない。
そのまま徒歩で裏口から消えた。
車だけが残った。
翌朝、ニュースを見て背筋が冷えた。
「昨夜、市内でひき逃げ事故。歩行者が重傷。」
時間は、2時前後。
現場は、ここから車で10分。
嫌な予感しかしない。
私はすぐに警察へ連絡し、映像を提供した。
数時間後、警察が来た。
車両確認。
バンパー破損箇所一致。
血痕採取。
ナンバー照合。
所有者特定。
さらに決定的だったのは、映像。
顔が、はっきり映っていた。
帽子もマスクもしていない。
焦った表情まで、鮮明だった。
逃げたつもりだったのだろう。
高級車を捨てれば終わりだと。
だが、その日の夜。
ニュース速報が流れた。
「ひき逃げ容疑で男を逮捕。」
映像と同じ顔だった。
報道では言わなかったが、私は分かっている。
あの男は、ニュースを見たはずだ。
あの駐車場の映像を知らずに。
自分の顔が、証拠として残っていることも知らずに。
高級ヴェルファイアは、まだ警察に押収されている。
あれは逃走用の道具じゃなかった。
証拠の塊だった。
証拠は、自分で置いていった。
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