新幹線でも電車でもなく、
よりにもよって“飛行機”だった。
逃げ場がない。
席も変えられない。
そんな密室で、それは始まった。
隣に座っていた女性は、最初は普通だった。
スマホをいじり、イヤホンをつけ、どこにでもいる乗客。
でも数分後、違和感が出てきた。
足元で、妙な音がする。
ガリガリ…。
一瞬、何の音か分からなかった。
でもすぐに理解した。
彼女、自分の足を削ってる。
しかも専用の器具みたいなもので、
角質をゴリゴリ削り始めた。
……は?
いやいや、ここ飛行機なんだけど?
風呂場じゃない。
自宅でもない。
完全な公共空間。
しかも問題はそこじゃなかった。
削れた皮が、そのまま床に落ちていく。
ポロ…ポロ…ポロ…。
気づけば、足元に白い粉と破片が溜まっていく。
ちょっとした“山”みたいになっていた。
私は完全に固まった。
周りの人も気づいてる。
でも誰も言わない。
言えない。
この“地獄みたいな空気”。
そして極めつけは、その後だった。
彼女は削り終わると、
何事もなかったかのように手を止めた。
そして――
その手を、そのまま鼻に持っていった。
クンクン。
……え?
一瞬、理解が追いつかなかった。
でも次の瞬間、全身に鳥肌が立った。
今、削った“それ”を触った手で、
匂いを嗅いだ?
無理。
本気で無理。
吐き気が一気に込み上げてきた。
ここでようやく、前の席の人が振り返った。
顔が完全に引きつってる。
後ろの人も、小声で
「ちょっとやばくない?」と囁いていた。
空気が完全に変わった。
そして追い打ちのように、
彼女は周囲の視線に気づいたのか、こう言った。
「香港人じゃないよ!中国本土人だよ!」
……いや、そこじゃない。
問題はそこじゃない。
全員が同じことを思ったはずだ。
国とかじゃなくて、行動の問題。
マナー以前の問題。
結局、CAが状況に気づいて対応に入った。
席の周囲を確認し、
低い声で注意。
女性は不満そうな顔をしながらも、
ようやく手を止めた。
でももう遅い。
機内の空気は完全に壊れていた。
私はその後、
一切足元を見ないようにした。
見たら終わる気がしたから。
飛行機という逃げ場のない空間で、
たった一人の行動が、ここまで全員を不快にさせる。
あれはもう、トラウマレベルだった。
引用元:,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]