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麻痺があると伝えた直後、舌打ちされた。公共交通の運転手に—私は泣き寝入りしなかった
2026/03/01

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舌打ちされた瞬間、私はこの人の名前を覚えようと思った。
23時47分。発車まであと28分だった。

福岡空港から博多駅まで。
本来なら地下鉄で十分だと、地元の人は言う距離だ。

でも私は、地下鉄を使えない。

病気の後遺症で右手に麻痺が残っている。
スーツケースの持ち手を強く握れない。
階段は怖い。手すりを掴んでも力が入らず、体が傾く瞬間がある。
混雑したホームで押されたら、踏ん張れない。

だからタクシーを選んだ。

行き先を「博多駅」と告げたとき、運転席から低い声が落ちた。

「博多駅なら地下鉄がよかったやろ」

独り言のような口調だった。
でも、はっきり聞こえた。

ルームミラー越しに目が合う。

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冷たい視線だった。
観光客だと思われたのかもしれない。
“わざわざタクシーを使う客”を見る目だった。

私は静かに言った。
「すみません、病気で麻痺があって、地下鉄が難しいんです」

一瞬の沈黙。
そして、小さな舌打ち。

車内の空気が、明らかに変わった。

それ以上、私は何も言わなかった。
感情的になっても、発車時刻は待ってくれない。

博多駅が近づいたとき、私はゆっくりとスマホを取り出した。
焦らない。急がない。

「お名前、もう一度よろしいですか」

運転手は少し間を置いて、名札の名前を言った。

私は続けた。
「会社名も確認させてください。領収書をお願いします」

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ルームミラーの中の目が、わずかに揺れた。

私は会社名を復唱した。
車両番号も、はっきり声に出して確認した。

その瞬間だった。

運転手の声が変わった。

「……申し訳ありませんでした」

急に敬語になった。
さっきまでの棘のある口調は消えていた。

私は何も返さなかった。

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