ちょっと後悔した話。
新幹線がゆっくり動き出して、車内は静まり返っていた。たまに誰かが小声で話すくらい。それが突然、一声の赤ちゃんの泣き声で破られた。見た目に1歳くらいの子を抱えた若いママ。車内のほとんどの人がその泣き声に目を向ける。子どもは目を真っ赤にして、もう泣き声が心臓をえぐるようだ。
ママはすぐに立ち上がり、泣き止まない子どもを抱えて連結部に向かう。動きが慌てていて、なんだかもう「早く人目を避けたい」って感じ。でも、泣き声は一向に収まらず、むしろどんどん大きくなって、もう耳が痛くなってくる。
その様子を見ていた40代くらいの女性、心の中でこう思う。「こんなに泣かせて、どうしたらいいんだよ、もう…」近づこうとも思ったけど、周りの人たちがもう目を背けているのがわかる。「こんなに泣く子、どうにかしてほしい…」って言いたげな顔してる人もいるし、「こんなガキ連れてくるなよ、迷惑だろ」って小声で言う奴もいる。
その瞬間、女性は悩んだ。
結局どうしようもないと思ったけど、でも自分がこのまま何もせずにいることに耐えられなかった。「無視しても、やっぱり助けるべきじゃない?」と思った時、車内アナウンスが流れた。「まもなく、京都、京都…」
でも、泣き声はまだ続いている。ママも限界に近い様子だ。時折、深いため息とともに、すごく弱々しく「ごめんなさい…」ってつぶやく声も聞こえてくる。まるでその声が、女性の心に突き刺さった。
そして、大阪に近づく頃、女性は決心した。「どうしても、このまま放っておけない」そう思って、連結部に向かう。ママは顔が疲れ切っていて、目をほとんど開けられない。子どもは相変わらず泣きっぱなし。
その時、女性は自分の不安を振り払って、低い声で言った。「すみません、私は助産師なんです。お手伝いできることがあれば…」その瞬間、ママは涙を堪えきれず、泣き崩れた。「ごめんなさい、本当にごめんなさい…」子どもをしっかり抱きしめて、女性は背中を軽く撫でた。
「大丈夫、私がしっかり見てあげるから。」ママはようやくほっとした顔を見せ、少しだけ安心した様子で水を飲んでいた。
その間、女性は黙って子どもを抱いて、10分ほど過ごした。その空気が、車内のどこかで和らいだような気がした。
「ありがとう…本当にありがとう…」とママが涙を流しながら感謝の言葉を口にした。その瞬間、女性の心に何かが込み上げてきた。「もっと早く声をかけていたらよかった…」と思わず自分を責めてしまった。
列車が次の駅に向かって走る中で、女性はふと思った。あの一瞬の優しさが、こんなにも大きな意味を持つなんて、思いもしなかった。