給料明細を開いた瞬間、息が止まりました。
【燃料異常費 30,000円】
……また、これ。
笑ったつもりだったのに、指先が震えてて。
ハンドル握って走って、荷物背負って、汗も背負って、
それでも「女だから雑」「だから燃費が悪い」って、紙一枚で決めつけられるんだなって。
点呼室に入ったら、空気が冷たい。
エアコンじゃなくて、言葉の温度が。
「井上、これサイン」
運行管理の佐久間さんが、説明書みたいに言いました。
そこには“燃料異常”の用紙。
「根拠、確認していいですか?」
そう言った瞬間、あの顔。
“面倒くさいやつ”を見る顔。
「油カードの記録あるだろ。異常出たんだよ。会社は慈善じゃない」
後ろで誰かが笑う。
「女は細かいの苦手だもんな〜」
「気にしすぎ。笑ってりゃいいのに」
……ねえ。
まっすぐ生きてるだけで、なんで笑われるんだろ。
私はその紙を押し返して、スマホを出しました。
カシャ。
点呼表。
カシャ。
燃料メーター。
カシャ。
走行距離。
いわゆる“三点セット”。
毎回、同じ角度で。
同じタイミングで。
撮る。
「何やってんの?」
「記録です。今日から全部残します」
「会社が信用できないのか?」
私は目をそらさなかった。
「私は、記録を信用します」
そこから私の毎日は、少しだけ変わりました。
荷下ろしのあと、足が棒でも、
眠くても、
誰に何を言われても、
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