歩道を歩いていると、目の前の壁に貼られた告示が目に入った。
「落書き禁止」
赤文字で強調された注意書き。誰が見ても公式の警告。
でも、その直後、スプレー缶の蓋をカチッと鳴らす音。
奴は平然と壁に向かい、黒い線を描き始めた。
線は自由奔放で、暴力的に壁を切り裂く。
通行人が立ち止まり、スマホを構える。
誰も止められない。挑戦者は堂々としている。
私の心臓が一瞬止まった。
警告は明確。公共物の破損は犯罪になるはずだ。
でも、奴の顔には自信の炎。やめる気配はない。
私は深呼吸した。
静かに、確実に、スマホを取り出す。
録画ボタンを押す。
スプレーの動き、線の角度、滴る黒い液体。すべて記録する。
証拠は後で強力な武器になる。
「警察呼んだほうがいいのでは?」
通行人の声が遠くで聞こえる。
誰かが頷く。挑戦者は一瞬、手を止めた。
しかし、目の奥には挑戦心が消えていない。
壁の前で私は立ったまま、心理戦を開始する。
“誰も止められない。でも記録は止められない。”
心の中で、そう自分に言い聞かせる。
告示には、連絡先も明記されている。
「落書きをした者は器物破損の罪となります」
法的には明確。挑戦者はこの告示を無視している。
だが、私の証拠映像は公開可能だ。
今日、この瞬間の全てを記録し、周囲に示す。
黒い線が壁を覆い、形ができあがる。
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