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トイレまであと3メートルなのに、床に座る高校生に通路を塞がれ「なんなんコイツ」と笑われた夜
2026/02/21

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トイレまで、ほんの3メートル。
見えているのに、私は進めなかった。

地方の通学電車。
連結部にも、ドア前にも、そしてトイレの前にも、高校生が座り込んでスマホをぽちぽち。
床にぺたり。脚は通路いっぱいに伸びている。

私は最初、とても普通に言った。

「すみません、通してもらえますか?」

声は丁寧だったと思う。
けれど返ってきたのは、冷たい視線と小さな笑い声。

「なんなんコイツ」

はっきり聞こえた。

誰もどかない。
誰も動かない。
そして周りの大人たちも、見事に目をそらす。

イヤホンを直す人。
スマホを見つめ続ける人。

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吊革を握ったまま、石像みたいに固まる人。

私はもう一度言った。

「トイレに行きたいんです。通してください。」

今度は少し強めに。

でも彼らは動かなかった。
ひとりが露骨にため息をつき、別のひとりがニヤっと笑った。
“うざい大人が来た”という空気。

その瞬間、胸の奥がぐっと熱くなった。

情けないけど、ちょっと泣きそうになった。
トイレに行けないからじゃない。
公共の通路で、お願いしないと歩けない自分が、急にすごく小さく感じたから。

でも、そこで引いたら、きっとこの光景はずっと続く。

私は一歩前に出た。

そして、はっきり言った。

「ここは通路です。トイレ前は座る場所じゃありません。」

声を、わざと上げた。
車両全体に届くくらい。

空気が変わった。

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さっきまで無関心だった視線が、一斉にこちらを向いた。
高校生たちの顔が一瞬固まる。

「ちょっとくらい別にいいじゃん」

ひとりが言い返す。

私は即座に返した。

「よくないです。今、私は通れません。ここはあなたたちのスペースじゃない。」

今度ははっきり、怒っていた。

そのとき、後ろから声がした。

「通路だよ。立ちなさい。

サラリーマン風の男性だった。
さらに、別の女性も続く。

「トイレ前はダメでしょ。」

空気が一気に逆転した。

高校生たちは明らかに動揺した。
さっきまでの余裕は消えている。

そこへ、乗務員がやって来た。

「通路確保をお願いします。座り込みはご遠慮ください。」

静かな声。でも、絶対的なトーン。

それで終わった。

彼らは渋々立ち上がり、バッグを拾い、連結部の方へ移動した。

私はゆっくり前に進んだ。
たった3メートル。

通り過ぎるとき、私は言った。

「ありがとうございます。やっと通れます。」

皮肉でもなく、でも柔らかくもない声で。

トイレのドアを閉めた瞬間、深く息を吐いた。

怖かった。
でも、言ってよかった。

本当に怖いのは、座り込みじゃない。
“誰も何も言わない空気”のほうだ。

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公共のルールは、紙に書いてあるだけじゃ守られない。
誰かが声を出さないと、ただの背景になる。

今日はたまたま、私がその役だっただけ。

トイレまで3メートル。
その距離を取り戻すのに必要だったのは、勇気というより、ほんの少しの「もういい加減にして」の気持ちだった。

地方の通学電車アウトローすぎる?
たぶんそう。
でも、それを放置する大人もまた、アウトローなのかもしれない。

今日は、黙らなかった。
それだけで、ちょっとスッとした。

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