「ちょっとスマホを見るだけで大丈夫だろう…」そう思った瞬間、目の前の景色が一変した。赤信号。いや、もう赤になっていた。私はメッセージを送ったばかりで、完全に油断していた。心臓がドキリと跳ねる。
「おい、そこの自転車!」
後ろから厳しい声。振り向くと、制服姿の警察官が私を指さしている。いやいや、冗談だろ…と思ったが、目の前の現実は冗談ではなかった。携帯を使いながら信号を無視した違反。まさに法律の抜け穴に自ら飛び込んだ瞬間だった。
足は自然に止まり、両手はスマホを握ったまま固まる。警察官が近づいてきて、私の行動を一つずつ指摘する。「携帯電話使用と信号無視、両方とも該当します。危険です」
その言葉に、頭の中で過去の瞬間がフラッシュバックする。前もって注意されていたはずなのに、なぜか「自分は大丈夫」と思い込んでしまった自分。冷や汗が背中を伝う。
「す、すみません。もう絶対に気をつけます!」
思わず叫ぶように言った。警察官は無言で私を見つめ、深く息をつく。そしてゆっくりと、指導警告票を差し出す。
「今回はこの指導警告で済ませます。
気をつけてください」
心臓が止まるかと思うほどの緊張から、一気に解放される爽快感。ああ、命拾いした。罰金も、拘束もない。ただの警告。だが、その瞬間に私はハッキリと学んだ。自分の甘さがどれだけ危険だったかを。
帰り道、足取りは軽い。空気がいつもより澄んで、風が気持ちよく頬を撫でる。思わず笑ってしまう。あの瞬間の緊張と、今の安堵感のコントラストが、心地よく背中を押してくれる。
家に着くと、警告票を机の上に貼った。見るたびに、あの日の緊張と、警察官の厳しい目、そして救われた自分の心を思い出す。
もう二度と、スマホを見ながら信号を無視するなんて愚かなことはしない。安全第一。それを身体で覚えた瞬間だった。
翌日、友人にこの話をすると、全員で大笑い。「そんなギリギリのところを!」「でも無事でよかったね!」と、互いに笑顔で話す。笑いながらも、心の奥底では、あの緊張と解放の感覚がしっかり刻まれている。
あの日の私は、無意識のうちに危険に飛び込んでいた。だが、指導警告票一枚で、自分の過ちと向き合い、安全を最優先にする心を手に入れたのだ。
それ以来、自転車に乗るときは必ず確認する。信号を守り、周囲を注意し、スマホには触れない。短い一瞬の油断が、大きな事故につながることを知ったからだ。
この指導警告票は、ただの紙切れではない。私にとっては、危険から救ってくれた教訓の証。見るたびに心が引き締まり、同時に爽快感が込み上げる。
今日も私は、自転車に乗る。だが、あの日の自分とは違う。安全を守る意識が、風よりも速く、私を守ってくれるのを感じながら。