ドアが「プシュー」と開いた瞬間、私は固まった。
――私が予約した“特大荷物スペース”が、でっかいスーツケース3つで完全に塞がれていた。
今日は双子連れ。ベビーカーは畳むと逆にかさばるタイプで、だからこそ往復とも「特大荷物スペース付き座席」を2席予約した。
これで通路も塞がない。安全だし、私も周りもラク。…のはずだった。
ベビーカーの車輪が行き場を失って、通路の真ん中で止まる。
後ろは人の波。小さな渋滞ができて、視線が刺さる。
「大変そう…」と同情の声もあれば、
「まぁまぁ、相手も外国の人かもよ?」と“空気で済ませよう”とする声も聞こえた。
塞いでいるのは、海外旅行客らしき数人。
私が「すみません、ここ予約していて…」と伝えると、彼らは急に“聞こえないフリ”。
笑顔で手を振って「空いてるよ」みたいに指さす。
…いや、そこ通路。
正直、泣きそうだった。
でもここで感情を爆発させたら、話の軸が「ルール」から「母親がキレた」に変わる。
双子の片方がグズり始めて、もう片方もつられて顔がくしゃっとなる。
私は深呼吸して、スマホを握った。
「すみません、乗務員さんお願いします」
私は“戦う”じゃなくて、“手順を踏む”を選んだ。
来てくれた車掌さんに、予約画面を見せる。
車両番号、座席番号、特大荷物スペース付きの表示。全部揃ってる。
「ベビーカーは畳むと大きくなって危ないので、ここに入れるために予約しました」
自分でも驚くくらい冷静に言えた。
車掌さんはうなずいて、すぐに多言語で説明してくれた。
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