今日、仕事を終えたばかりで、ようやく家に帰れると思った瞬間だった。夕方の忙しい時間帯、タクシーを拾うために手を挙げた。帰宅ラッシュに巻き込まれる前にさっさと家に着きたかった。普段なら、すぐにタクシーを見つけられるものだが、今日はちょっと時間がかかった。それでも、ようやく来たタクシーに乗り込んだ。
車内に入ると、思ったよりも車内は静かだった。どこか少し古びた感じがして、エアコンの効きも悪い。窓から入ってくる風が微妙に涼しくて、なんとなく居心地が悪い。でも、疲れていたし、それほど気にしないことにした。運転手は、年配の男性で、無愛想な顔をしていた。目を合わせても、少ししか返事もしない。ただ黙々とハンドルを握っているだけだ。車内の空気が重く感じて、私はただただ窓の外を眺めていた。
しばらくして、目的地に着いた。エンジンが止まり、車の揺れも収まった。計算が終わり、メーターを見ると500円になっているのがわかった。心の中でほっとして、財布から1000円を取り出した。さっさと支払いを済ませたかった。
ただ、すぐにドアを開けて降りたいと思っていたのに、運転手は動かない。
「え、何してるんだろう?」と思った私は、1000円を手に持って運転手に差し出した。けれども、運転手はそのまま黙って、メーターをじっと見ているだけだった。まるで、何かを待っているように、静かな時間が流れる。気づくと、数秒が経っていた。運転手がやっと口を開いた。
「600円ですね。」
その瞬間、私の頭の中に警鐘が鳴った。目を見開き、すぐに反応した。
「え、500円から600円に変わったの?どういうこと?」私の声が少し震える。明らかにその増額は不自然だ。もしかして、計算ミスだったのだろうか?それとも、故意に待機していたのか?
運転手はただ冷静に答えた。「600円です。」
その冷静さが、私の中の怒りを爆発させた。なんでそんな顔で、堂々と嘘をつけるんだろう?この明らかな不公平を、どうして我慢しないといけないのか?
私の内心では怒りが募っていく。「待って、あんた、計算ミスじゃないだろう?このタイミングでメーターが上がるのを待ってたんじゃないのか?」
運転手は何も言わず、ただ黙っている。あまりにも不気味だ。私はもう我慢できなかった。
「おい、これ以上引き延ばしても意味ないぞ。」私は強い口調で言った。「500円だけ渡すから、後はどうでもいい。」
運転手がその場で何も言わずに、私が手渡した500円を受け取る。その表情に一瞬の驚きが浮かんだが、すぐに無表情に戻った。
その後、何も言わずに車から降りた。心の中で、ものすごいすっきりした感覚が広がった。
あの不快な空気、何も言わずにただ待っているような態度。
運転手は私が1000円を出した瞬間に、計算が終わったと思っていたのかもしれない。でも、その後メーターが上がるのを待つなんて、まるで私を試すような行為だった。正直、非常に不愉快だった。それを感じ取って、私は反応した。
私は、もしあの瞬間に我慢していたら、また別の不公平を受け入れる羽目になっていただろう。きっと「100円くらい、大したことないじゃないか」と自分を納得させて、そのまま流すところだった。でも、今回は違った。自分の正当性を主張することで、何かを得た気がした。
家に着く途中、心の中ではすっきりした気持ちと同時に、社会の不公平について考えさせられた。なぜ、わざわざこんなことをしなければならないのか。結局、誰が悪いのか。運転手の態度もあるが、何よりそのルール、あるいはその運営のシステムが問題だろう。
その後も、タクシーを利用するたびに、あの運転手の顔を思い出すことがある。次に同じような状況に直面したとき、私はまた反応するだろうか。もちろん、理不尽なことに対しては、しっかりと自分の意見を言わないと、この社会は何も変わらないと感じている。
少なくとも、あの瞬間、私は一歩前に進んだと感じた。
これが、私のちょっとした反撃の物語だ。