月例ミーティングが始まった瞬間、
全員が「何かおかしい」と察した。
社長の顔色が悪かったからではない。
それはいつものことだ。
問題は、スクリーンに映し出されたその一行だった。
「今月の店舗目標:徳田 3.5」
会議室が、三秒静まった。
四秒目、新人アルバイトの小林が、おそるおそる手を挙げた。
「すみません……あの……」
喉を鳴らしてから、こう聞いた。
「徳田1って、いくつですか?」
再び、沈黙。
ベテランたちは顔を見合わせた。
その目ははっきり言っていた。
――ああ、まだ“この世界”を知らないな。
店長が軽く咳払いをし、レーザーポインターで表を指した。
「いい質問だ。」
「じゃあ、王さん、説明してあげて。」
倉庫担当の王は、十年分の苦労が染みついた顔で、眼鏡を直した。
口調は驚くほど自然だった。
まるで重力の話でもするかのように。
「簡単に言うとね」
「徳田0.5は“小ミス”だ。」
小林が目を瞬かせる。
「……小ミス、ですか?」
「そう。」
王はうなずく。
「コーヒー粉を二箱多く発注。
『発注担当がうっかりしました』って張り紙を出す。
三日で完売。バズらない。」
小林のペンが止まった。
「じゃあ……徳田1は?」
今度はレジ担当のおばちゃんが答えた。
「徳田1は、王道の“爆売れミス”。
」
「パレット単位で多すぎる。
値段がおかしい。
コメント欄に『徳田来た?』が出始める。」
少し考えて、付け足す。
「だいたい行列つき。」
小林の手が震え始めた。
「……じゃあ、徳田2は……?」
途端に、会議室がざわついた。
「徳田2?」
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