実家に帰ったその日、私は父から渡された一枚の通帳を手に取った。期待で胸が高鳴る。これまで8年間、生活費として月々5万を渡していた。私の努力と犠牲が、きっと大きな結果を生んでいるはずだと思っていた。父が言った通り、「お前が結婚する時まで貯めておいてやる」と。思い描いていたのは、結婚式の準備金や新しい生活のために、数百万が貯まっている通帳だ。
しかし、その通帳の残高を見て、私は言葉を失った。「857円」。あまりに現実的すぎる数字に、しばらくそれを見つめることしかできなかった。500万円近く貯まっていると信じていた私が馬鹿だったのか。それとも、この8年間は一体何だったのか?
「それは甥の結婚祝いに使ったんだよ」— 父の一言が、私の怒りを引き金にした。20万円が最近引き出されていたのは、甥の結婚式のためだと言う。私は冷静を保とうとしたが、心の中では爆発寸前だった。結婚式のために大切に使うべきお金が、こんな風に消えていくなんて、あまりにも不公平だ。
私はさらに問い詰めた。8年間も仕送りしてきたお金、そして私の結婚のために貯めていたはずのものが、どうしてこんな形で無駄になったのか。
父の顔色が変わるのを見て、私は確信した。父は私を裏切っていた。
そして、最後に父から渡されたのは「1万円の結婚祝い」だった。私はその封筒を受け取った瞬間、心が完全に冷めた。こんなもので済むと思っているのか、と思った。何も言わず、その1万円を受け取り、結婚式の準備を進めることにした。しかし、私の心の中ではすでに決まっていた。父を結婚式に呼ぶことは、もうない。
結婚式の準備を進める中で、私ははっきりと感じた。親の期待や義務感から解放されて、ようやく自分の人生を歩む時が来たのだと。父がいなくても、私は幸せな結婚を迎えることができる。そして、もう父の顔色をうかがう必要もない。
結婚式当日、私は父を招待しなかった。周りからは「親不孝だ」と言われるかもしれない。しかし、私は後悔していない。あの瞬間、父の期待に応えるために生きるのではなく、私自身の人生を生きると決めたのだ。
私は心の中で誓った。もう誰かのために自分を犠牲にすることはない。父に裏切られたことをきっかけに、私はようやく本当の意味で独立することができた。
これからは、私の人生を私が選び、私が築いていく。