予約したのに、他人のスーツケース5つの前に立たされた
発車ベルが鳴った瞬間、私は凍りついた。
目の前に並んでいたのは、スーツケースが5つ。
全部、私のじゃない。
ここは大型荷物スペース。
事前予約制。ちゃんと手続きした人の場所。
なのに、私と同僚の前に立ちはだかっているのは
「置き逃げ」された荷物だった。
車内を見渡す。
誰も名乗り出ない。
周囲の乗客はチラチラ見るだけ。
誰も動かない。
発車ベル、2回目。
「この荷物、どなたのですか?」
声を張る。
返事なし。
守った側が、我慢?
それが一番嫌いだ。
出入口も狭い。
通路も圧迫。
緊急時、危険。
ルールを守った人が損する空気。
それが一番ムカつく。
私は同僚を見た。
うなずき合う。
やるしかない。
1つ目。持ち上げる。重い。
デッキへ運ぶ。
発車ベル、最後の警告。
2つ目。腕に負担。
汗がにじむ。
周囲が見てる。
でも誰も止めない。
3つ目。
4つ目は同僚が持つ。
最後の5つ目をホームへ降ろした瞬間、
ドアが閉まり始めた。
持ち主は現れない。
車掌も来ない。
車内の通路がスッと空いた。
空気が変わる。
本来の状態に戻っただけ。
発車。
座席に腰を下ろした瞬間、
胸の奥に溜まっていた何かが抜けた。
スッとした。
これは報復じゃない。
ルールを元に戻しただけ。
守った人が遠慮する社会は、おかしい。
新横浜到着。
トラブルなし。誰も文句なし。
次も同じ状況なら?
私はまた同じことをする。
迷わない。
だって、私は間違っていない。
守るべきものを守っただけだ。
その日、新幹線の通路は、
少しだけ正しくなっていた。
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