夕方の公民館。
古いエアコンの音が低く響き、折りたたみ椅子に座った数人の男性たちが、無言で資料に目を落としていた。
「60歳で辞めるか。
それとも、あと2年だけ働くか……」
誰かが、ぽつりとつぶやく。
その言葉に、空気が一瞬だけ重くなった。
定年、再雇用、年金。
答えのない選択を前に、同じように40年以上働いてきた男たちが、同じ場所に集まっていた。
その中に、親戚同士の二人がいた。
佐藤一郎と田中健二。
同い年、同じ工場で汗を流してきた二人だ。
この日の会話が、
のちに老後の手取りに「年間10万円以上の差」を生むとは、
まだ誰も気づいていなかった。
60歳の春。
一郎は「もう十分だ」と退職を決意。
健二は「制度が分かりにくいから」と、再雇用で62歳まで働く道を選んだ。
数か月後、二人は親戚の集まりで顔を合わせる。
一郎が言った。
「年金しかないのに、住民税がかかった。正直きつい」
健二は首をかしげた。
「俺は、税金0円だったけど……」
ここから、二人は制度を一つずつ確認していく。
・老齢年金収入:156万円
年金は雑所得。
65歳以上の公的年金等控除は 110万円。
計算式
156万円 − 110万円 = 雑所得46万円
住民税の非課税基準は、
合計所得45万円以下。
一郎は 1万円オーバー。
結果:
・所得割:0円
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