あの3通の封筒を見た瞬間、手が止まった。
子ども3人分。
ちゃんと人数分ある。
だから余計に、たちが悪かった。
「今できる分だけ、お祝いを渡す」
その言葉を見たとき、正直、ほんの少しだけ期待してしまった。
離婚して6年。
養育費は一度もなかった。
誕生日も、入学も、運動会も、発表会も、全部こっちだけでやってきた。
熱を出した夜も。
制服代に青ざめた月も。
給食費と家賃を見比べて、ため息を飲み込んだ日も。
あの人は、何も知らない顔をして生きていた。
それでも。
子どもたちが3人とも卒業したとき、私は写真だけ送った。
「3人とも無事に卒業しました」
父親だから。
せめて事実だけは知っていてほしかった。
返ってきたのが、
「今できる分お祝いを渡す」
だった。
私は馬鹿みたいに、その言葉を一瞬だけ信じた。
大きなお金じゃなくていい。
子どもたちに一言でもいい。
「おめでとう」だけでもいい。
そう思っていた。
でも届いた封筒を開けたら、全部空だった。
1円も入っていない。
手紙もない。
メッセージもない。
ただの空の封筒。
最初、意味が分からなかった。
見落としたのかと思って、机の上を探した。
封筒の中をもう一回のぞいた。
裏返して振った。
何も出てこなかった。
3通とも。
私はスマホを持って、震える指で送った。
「これが今の気持ちですか?」
すると、すぐ返事が来た。
「確認してもらえたようでよかったです」
その瞬間、胸の奥が一気に冷えた。
怒りというより、
ああ、この人は本当にこういう人だったんだ、と思った。
6年前に別れたとき、私はまだどこかで思っていた。
夫としては無理でも、父親としては少しくらい何か残っているんじゃないかって。
でも違った。
子どもの卒業すら、嫌がらせの材料にできる人だった。
その日の夜、末っ子がぽつりと言った。
「友達の家、いいな。卒業のお祝いでみんなでご飯行ったんだって」
私は笑って返した。
「うちも今度行こうね」
でも台所に立った瞬間、涙が落ちた。
悔しかった。
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