「3万フィートの上空で“窓を開けろ”と叫ばれた。」
飛行機内で、90kg近い男が窓に向かって突進した。
密室の機内で、空気が一瞬で凍る。
女性乗務員が一人で立ちはだかる。
体格差は歴然。
止められるはずがない。
「酸素をよこせ!窓を開けろ!」
男の声が反響する。
周囲の男性客が立ち上がった。
だが、その瞬間。
「下がってください!」
乗務員が強く制止した。
私は立ち上がった。
心臓がうるさい。
でも、座っていられなかった。
「責任取れますか?」
機内が一瞬、静まり返る。
乗務員がこちらを見る。
「え…?」
私は続けた。
「このまま止められなかったら、責任取れますか?」
空気が変わった。
男性客の一人が、私を見て小さく頷いた。
次の瞬間。
彼らは迷わず動いた。
男を後方へ押し戻し、窓から引き離す。
床に座らせ、腕を押さえる。
男は暴れたが、今度は数で勝った。
乗務員も加わる。
完全な制圧ではない。
だが、明らかに主導権は戻った。
拍手はない。
でも、空気が違う。
あの一言が、境界線だった。
着陸後、男は静かに連れ出された。
説明はない。
「ご迷惑をおかけしました」の一言だけ。
私は座り直した。
手が震えているのに気づく。
怖かった。
でも、あの瞬間。
止めるべきは“助け”じゃなかった。
止めるべきは、迷いだった。
3万フィートの上空で、
安全は、遠慮して守れるものじゃない。
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