「肉の日は、だいたいこうなります」
店員さんは、あまりにも普通の顔でそう言った。
いやいやいや。
こっちは今、目の前のカウンターに流れてくるスープを見て、
箸を持つ前に固まっているんですけど。
でも店員さんは、慌てない。
紙ナプキンを数枚置いて、
さらに小さな受け皿みたいなものまで、すっと横に出してくれた。
その動きが早い。
完全に慣れている。
「あ、初めてですか?」
と言われて、私は小さくうなずいた。
初めてです。
というか、ラーメンでこんな始まり方をしたのが初めてです。
目の前にあるのは、名前の通りチーズバーガーラーメン。
器の上には、肉。
その上にチーズ。
さらにバンズ。
もう、情報量が多い。
ラーメンを食べに来たはずなのに、
途中からハンバーガー屋に迷い込んだような気分になる。
それなのに、ちゃんとスープの香りがする。
湯気の中に、肉の香ばしさとチーズの匂いが混ざって、
頭では理解できていないのに、胃だけが先に反応していた。
隣の席のお客さんが、ちらっとこちらを見た。
たぶん、私の顔が分かりやすすぎたんだと思う。
「すごいですよね」
と笑われた。
私は思わず、
「これ、どこから行くのが正解なんですか?」
と聞いてしまった。
すると店員さんが、また落ち着いた声で言った。
「まず、上から崩してください」
上から崩す。
ラーメンで聞く言葉じゃない。
でも、言われた通りに箸を入れる。
最初に肉を少しずらした瞬間、チーズがとろっと伸びた。
その下からスープを吸った具材が出てきて、
さらにバンズの端が、じゅわっと染みているのが見えた。
あ、これはまずい。
見た目だけのネタじゃない。
ちゃんと考えて作ってあるやつだ。
最初は、こぼれているスープばかり気になっていた。
でも一口食べた瞬間、全部どうでもよくなった。
肉の重さが来る。
そのあとチーズの濃さが来る。
でも最後にラーメンのスープがちゃんと戻してくる。
バラバラに見えるのに、口の中ではなぜかまとまる。
悔しいけど、うまい。
しかも、ちょっと笑ってしまうくらいうまい。
私は紙ナプキンでカウンターの端を押さえながら、
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