「駐車場に戻ったら、トナラーLv100が誕生していた。」
思わず立ち止まった。
駐車場は、ほぼガラガラ。
空いているスペースはいくらでもある。
それなのに、私のジムニーの真横に黒いJeepがぴったり貼り付くように停まっていた。
しかもただ隣に停めているだけじゃない。
完全に線またぎ。
距離はほぼゼロ。
助手席のドアなんて、どう考えても開かない。
「いやいや、なんでここ???」
思わず周りを見渡した。
右も空き。
左も空き。
向こう側なんて、ほぼ貸し切り状態。
それなのに、なぜわざわざここに来る。
しかもこの停め方。
トナラーってレベルじゃない。
トナラーLv100。
あまりにも見事だったので、思わず写真を一枚撮った。
そのとき、背後から声がした。
「何か問題あります?」
振り向くと、Jeepのオーナーらしき男性が立っていた。
30代くらいだろうか。
コンビニ袋を持っていて、少し不機嫌そうな顔をしている。
どうやら近くの店から戻ってきたらしい。
私は男性と車を交互に見た。
そして聞いた。
「この駐車場、ここしか空いてなかったんですか?」
男性は少しムッとした顔をした。
そして言った。
「別にいいでしょ。ここ、家から一番近いんで」
私は思わず周りを見た。
駐車場は、ほぼ空いている。
本当に、どこでも停められる。
それでも彼は、私のジムニーの真横にぴったり停めた。
しかも線またぎで。
私は聞いた。
「近いからって、この停め方ですか?」
男性は肩をすくめた。
「別に出れるでしょ」
どうやら本気でそう思っているらしい。
私は少し笑った。
そして言った。
「ええ車乗ってはる方は、運転もお上手ですなぁ」
男性の眉がぴくっと動いた。
「は?」
私はジムニーとJeepの隙間を指さした。
「じゃあ一回、助手席のドア開けてみます?」
そのときだった。
後ろで小さく笑う声がした。
振り向くと、近くに住んでいるらしい男性が様子を見ていた。
さらにもう一人、犬の散歩中の人も立ち止まった。
静かな駐車場に、妙な空気が流れる。
Jeepのオーナーは少しだけ焦った顔をした。
そしてようやく、自分の車を見た。
私のジムニーにぴったり貼り付いたJeep。
線は完全にまたいでいる。
ようやく状況が理解できたらしい。
数秒の沈黙。
そして小さく言った。
「……すみません」
そう言うと、急いで車に乗り込んだ。
エンジンがかかる。
ゆっくりとバックして、車を動かした。
さっきまでの密着が嘘みたいに、スペースが空いた。
私は普通にドアを開けることができた。
男性は車を停め直した。
今度は、かなり遠くのスペースに。
そこ、最初から空いてましたよね。
と心の中で思ったが、もう何も言わなかった。
男性は車から降りることもなく、そのままエンジンをかけて駐車場を出ていった。
逃げるように。
後ろで見ていた男性がぽつりと言った。
「ガラガラなのに、なんで隣来るんですかね」
私は苦笑した。
本当にそれだ。
私は自分のジムニーに乗り込みながら、さっきの光景を思い出していた。
ガラガラの駐車場。
わざわざ隣に来る。
しかも線またぎで密着。
理由はただ一つ。
「ここが家から一番近いから」
正直、理解はできない。
帰り際、バックミラーを見た。
さっきの場所には、私のジムニーだけがぽつんと停まっていた。
やっぱり思う。
トナラーって、本当に不思議だ。
なぜそこに来るのか。
そしてなぜ、あんな停め方になるのか。
ただ一つだけ言えることがある。
ガラガラの駐車場でトナラーLv100をやると、だいたい社死する。
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