60歳のときだった。
私は年金のことが気になって、年金事務所へ相談に行った。
老後のお金のことなんて、誰だって不安になる。
まして私は制度に詳しい人間ではない。だからこそ、こういうことは自分で勝手に判断せず、ちゃんと窓口で聞いたほうがいいと思っていた。
そのとき、私は繰下げ受給のことも聞いた。
少しでも将来の年金額が増える可能性があるなら、選択肢として知っておきたかったからだ。
すると、担当の人は私の話を最後まで聞く前に、ほとんど間を置かずこう言った。
「あなたの場合は、繰下げはしないほうがいいですね」
言い方は穏やかだった。
でも、あまりにあっさりしていて、まるでもう考える余地もない話のようだった。
その場では、私は「そうですか」と引き下がった。
正直に言えば、半分は納得し、半分は引っかかっていた。
私はもともと、役所や公的機関の説明を信じるタイプだ。
毎日その仕事をしている人たちなのだから、自分より詳しいに決まっている。素人があれこれ考えるより、専門の人の言うことを聞いたほうが間違いない。ずっとそう思ってきた。
けれど、その日家に帰ってから、どうしても心の中に小さな棘が残った。
なぜ私は、まだ聞きたいことがあったのに、あんなに早く結論を出されたのだろう。
なぜ「なぜ繰下げをしないほうがいいのか」を、きちんと説明してもらえなかったのだろう。
私の状況を丁寧に見たうえでの判断だったのか。
それとも、単に面倒だから、一般的な答えで済まされたのか。
そのときは深く追及しなかった。
「きっと自分がわかっていないだけだろう」と思おうとした。
でも、その違和感は消えなかった。
それから2年。
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