
あの日の俺は、たぶん人生でいちばん「平然を装う力」を試されていた。
なにしろ、救急クリニックの待合室のど真ん中で、腰にバスタオルを巻いただけの状態で立っていたからだ。
しかもその下は半ケツ。
しかもケツには針が刺さったまま。
しかもそれを、誰にもバレずにやり過ごそうとしていた。
……いや、字面だけ見たら完全に終わってる。
でもそのときの俺は笑えなかった。
立ってるだけで痛い。呼吸しても痛い。ちょっと重心をずらしても痛い。
なのに座れない。
なぜなら、座った瞬間にいろんな意味で終わるからだ。
発端は本当にくだらない事故だった。
「こんなの漫画でしか起きねえだろ」ってレベルのアクシデントで、気づいたときには尻に針が刺さっていた。しかも抜こうとして下手に動かすと危ないらしく、そのままの状態で救急へ直行。
応急処置で腰にバスタオルだけ巻かれ、俺はそのまま待合室送りになった。
で、行ってみたら、まあ混んでる。
めちゃくちゃ混んでる。
具合の悪そうな人、ぐったりしてる人、子どもをあやす親、呼ばれなくてイライラしてる人。
みんな疲れてる。
それはわかる。わかるんだ。
でも俺だって好きで“半ケツ針男”をやってるわけじゃない。
俺はできるだけ目立たないよう、壁際で静かに立っていた。
「自分はただの風景です」みたいな顔で。
内心は「頼む、誰も話しかけるな。頼む、タオル落ちるな。頼む、今くしゃみだけは来るな」で頭がいっぱいだったけど。
そこに現れたのが、あのオッサンだった。
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